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光学の杜 Counted Since 2003.4.1
プアマンズの世界
連続供給方式の歴史
1 はじめに
もはや詰め替えでもありません。
連続供給です。
ここに至ったいきさつはインクの詰め替え作戦
などを読まないとわかりません。
しかし、いきさつはともかく
印刷のランニングコストを下げるにはこれがベストです。
趣旨説明を先にしておきます。
これは、単に綺麗な印刷のコストパフォーマンス追求の結果であり、
資本主義における経済流通機構になんらかの作為的な意図はございません。
これは製品ではなく、個人使用のあくまでも自作品であり、
メーカー製品の使用方法の工夫の一例です。
たとえば、エプソン製品の素晴らしいPM−950Cがなかったら成り立たないものです。
また、上質のインクを安く供給してくれる海軍爺様の「インク77」とDaiko(株)がなかったら
そもそもが始まっていませんでした。
☆
と、当初は始まったのですが、
少しずつ考えが変わりました。
地球の貴重な資源節約のためには、
メーカーも消耗品の合理的な提供が
必要であると考えるようになりました。
形だけの使用済みカートリッジの回収をして、
環境保全を訴えるようなこ姑息なイメージアップを図るより、
インク補充式プリンタを製品化する時代になるべきです。
昔は万年筆はカートリッジ・タイプではなく
インク瓶から、補充しておりました。
また、本来なら
色味の違うフィルムを、
目的別に使い分ける銀塩写真業界のように、
さまざまなインクを選択して、
連続供給システムのプリンタを製品化して、
ユーザーに提供すべきです。
自動車メーカーが安全走行のために
使用ガソリンは当社の純正ガソリンで走るようにといって、
高い値段でタンクごとガソリンを売るようになっていたとしたらどうしましょう。
ガソリンなど、何を入れても車は走り、故障はしません。
インクなど、何を入れてもプリンタは綺麗な印刷をすべきです。
いずれにしても、このような、意図に関係なく、当HPでは
非常に簡単に自作できる「連続供給システム」を提供します。
プリンタ本体には一切手をくわえることなく
ダメならば、後戻りができますので
1色からでもやってみてはいかがでしょう。
【関連知識】
まずは必読です。
繰り返し読んで理論を頭にたたき込みましょう。
大体、失敗の原因は理解不十分にあります。
そして、手先の器用さは二の次です。
作ろうとする意志の強さが一番。
第0章 歴史
ひとまず成功を重ねた連続供給のオリジナル版です。
第1章 カートリッジの構造
エプソン900系のカートリッジは素晴らしく複雑で巧妙です。
際2章 インク詰め替え
インク詰め替え技術をマスターしました。完璧です。
際3章 水割り・カクテル理論
インクの種類によらず、カラーバランスを取る画期的な方法です。
第4章 スケルトン・カートリッジ
スケルトン・カートリッジはエア抜きの教育効果抜群です。ぜひ作りましょう。
第5章 PM−800C
このタイプのカートリッジはスポンジのみですので超簡単詰め替えができます。
第6章 インク流量計測器
ヘッドクリーニングや、テスト印刷など、インクの消費量の正確な計測器です。
第7章 トラブル相談室
インクが全く出なくなった!という時も大丈夫です。
必読:目詰まりの問題に新事実発覚。
【最近のお知らせ】
このシステムを完成し使い始めて
およそ5ヶ月立ちましたが
その後、全く問題なくインクの途切れも皆無で、
快調そのものです。
本文でも書きましたように、
印刷のまえに必ずノズルチェック印刷をしますが、完璧です。
カラーバランスもディスプレイ画面とほとんど同じで、
詰め替えていた頃の悪戦苦闘が夢のようです。
作成された方は勿論のこと、これから読まれる方にも
安心してお奨めできますことを
ここに絶大なる自信を持って宣言いたします。
9月8日更新
☆
なお、ダークイエローにほんの少しブラックとシアンをカクテルしましたが
シャドー部の自然さが増し、大変具合がよろしいです。
実際にも、直射日光の日陰は青空からの回り込みで青っぽいのです。
暗部の階調改善のためにダークイエローにしたことで良くなるのは肌の暗部です。
景色一般ではダークブルーであるべきです。
6月18日
2 製作編
はじめに必要なパーツ及び道具の紹介をします。
1.一番重要なパーツは右上の自転車の修理部品「虫ゴム」です。
ホームセンターで1mぐらいで150円です。
2.次に重要なもの真ん中に置いてあるボールペンのインク軸、
これはうまいこと、このように減ったボールペンがないとダメです。
机の引き出しに1本や2本はあるでしょうが、
パーツ集めの中で、結構これを集めるのが最も難しい。
(後で述べるように、このパイプは真鍮パイプでも
タミヤのクリアパイプでも結構です)
3.ホット・ボンドの換え芯、右下のグルー・ガンで使用します。
4.あとは説明は要らないでしょう。
要は、このようなモノを作ればいいのです。
ゴムチューブの長さは24cmぐらい。
(平行に揃えてばらつかないようにしたいときは
36cmぐらいにすればいいでしょう。後は工夫次第です)
ボールペンの軸はカートリッジ側が長さ2.4cm、ポリタンク側が2cmぐらいです。
で
このようにボールペンのインク軸をポリタンクに付けます。
ちょっと不細工ですが、インクが流失するよりマシです。
ここが抜けたときの惨劇は、タンカーの座礁に近いモノがありますから。
☆
※ゴムチューブの長さは、インクタンクの設置場所に応じて適当に切ります。
カートリッジへの取り付けは次の写真のようにします。
※これらの作業はカートリッジからインクをすっかり抜くことからはじめます。
よくインクを拭いて乾かした状態で
ホット・ボンドを埋め込みますが、その前に瞬間接着剤で固定し、
ついでに気密封印します。ここの工程は重要です。絶対に気密性が保たれないといけません!
ホットボンドは注入した表側だけでなく裏まで行き渡るよう注意してください。
カートリッジのミゾを完全に埋めて、平に仕上げます。
このときにプリンター用紙などに入っている離型紙で押さえてやると
綺麗に平になります。
☆
さて、ここで、
接着が失敗すると、どんなに隙間がないように見えても
エアがここから入り、すべては水の泡となります。
瞬間接着剤で、よく隙間を埋めておきましょう。
この密閉が不十分だと
単なる上に穴の開いたカートリッジとなり、しばらくは印刷できても、
突然その色の欠乏した印刷となり、紙を1枚無駄にするでしょう。
カートリッジに差し込むパイプとして3mmの真鍮パイプ
(ホームセンターで1mの長さのものが140円でした。)
を使う場合、取り付け部は曲げて、カートリッジ上部に平行にした方が
ヘッドクリアランスの点からグッドです。
パイプを曲げるときは、中にちょうど良い太さのハリガネか銅線を入れて曲げると
つぶれずに綺麗に曲がります。カーブは少し大きめのR(曲率半径)にします。
作例をよく見て、製作してください。
この場合は、真鍮がプラスチックとなじみが悪いので
瞬間接着剤で付けた後、ホットボンドで完全に固定します。
ドリルで穴を開ける場所は下の写真のように青いラベルの側から見て
こちら側の2枚のプラスチック壁を貫くように垂直に開けます。
すると、この青いラベルの張ってある下は、カートリッジの構造を見て貰えばわかりますが
メインタンクと呼ばれる内部の小さな四角いタンクにつながります。
本当は丸いスタンバイタンクへ直接入れても良いのですが
インクフィルターを通してやらないとヘッドの目詰まりの原因になりますので
この方法をお薦めします。
ドリルの屑は、プラスチックですので、万が一内部に入ったとしても
軽いのでフィルターで止まり、スタンバイタンクまではいきません。
あまり神経質にならなくても結構です。
それより、垂直を保って、まっすぐ開け、
中のメインタンクを封印している薄い膜を破らないことです。
これについては、カートリッジの内部構造を熟知しておく必要があります。
カートリッジの構造
を先によく見て下さい。
幕を破っても、補助タンクという場所へインクが入り、いちおう印刷はできて機能しますが
滞留インクができて良くありません。
真鍮を使った場合(A.M氏製作)
もう一つ重要な気密ポイントがあります。
ここです。ここの封印は補助タンク及び正規の空気導入孔との連結部分であり
ここがしっかりふさがれていないと、気泡が入り込みポリタンクからのインクは途切れ
なおかつ、ここからインクが漏れてきます。
カッターナイフで青いラベルを切り開いた後、よく乾かし、
瞬間接着材の助けを借りながら、一気にホット・ボンドを注入し、封鎖します。
ここの部分の構造の理解はぜひとも必要なので第1部の記事をよくお読みください。
【もうひとつの封印場所】
※なお、ここの封印と同じことが、インク注入孔を塞ぐことで可能です。
技術的にはこちらの方が簡単と思われるので、初心者にお勧めです。
詰め替えで開けるインク注入部分の青いラベルをカッターナイフで丸く切り取り、
そこに見える1.5mmぐらいの穴を瞬間接着剤で塞ぐだけで良いのですから、
上で述べた側面の封印より簡単でしょう。
そして、補助タンクへつながる隙間はほっといて構いません。
なぜなら、メインタンクと補助タンクをつなぐ
唯一の経路がここだからです。
したがって、空気導入路関係も封印は必要ありません。
つまり、側面の封印で密閉に苦労された方は一度試してみると良いのですが
ポリタンクから連続注入しているインクは、このインク注入路には入りますが、
補助タンク及び、空気導入路の方には行きません。
カートリッジの構造をよく見て下さい。
私が、側面を封印したのは、なるだけインクが無駄に入らないよう
メインタンクに近いところを封印したかったためですが、
もう一つ理由があります。
余計な空間にインクが入りますと、そこでインクが停滞し
動かないインクが生じるのが良くないからです。
滞留したインクは変質する可能性があります。
☆
プリンタをしばらく使わなかったために、
インクタンク内にミズカビのような菌類が発生しました。
調べてみると、インクを移したポリタンク内にも発生しております。
このような菌類は至る所にいますので、製作過程で必ず入ります。
長期間動かない滞留インク中には、飲料水などを長期間保存するときにみられる
白濁した糊のようなもやもやが発生するようです。
この胞子がフィルターを通過してヘッドの方に行き
そこで繁殖すると徐々にインクの出が悪くなり
ある時を境に全くインクが出ない事故が起こる可能性があります。
毎日多量に印刷し、新鮮なインクが常に補給されるプリンタでは
このようなことはないと思われますが、
たまにしか使わなかったり
印刷量の少ないプリンタでは要注意です。
したがって、
連続供給システムは
多量に安く印刷したい人に最適です。
逆に、少量の印刷でたまにしか使わない人には不適です。
(トラブル相談室参照)
☆
完成したら、最後に重要な処置は、このカートリッジの中から完全にエアを抜くことです。
【ポリタンクからの吸引注入】
この処置は、放棄します。
チューブ内と
カートリッジへインクを導入するには、
インク吐出孔に注射器を差し込んで引きます。
これだけでOKです。
カートリッジに取り付けたパイプの密閉を確かめる作業は、
従来、口で吸っていましたが、省略します。
【インク排出口からのエア抜き】
気泡混じりのインクが出てこなくなるまで注射器でインクを抜き続けます。
抜いたインクは再びタンクへ戻し、繰り返します。
このときに、いつまでも気泡がインクに混じるようなら
封印箇所の密閉が破れている証拠です。
注射器で吸引しているときに瞬間接着剤を付けてやると
封印箇所にもし隙間があれば吸い込まれます。
そして、うまいこと中で固まり密閉が完成します。
☆
1度徹底的にやれば、もう2度とやる必要はないので頑張りましょう。
この写真で差し込んでいる箇所には、ゴム製のリングがあります。
これは、注射器の先端がちょうどきつくはいる大きさの穴のリングですから
抜くときは少し回しながら、リングを一緒に抜かないように注意します。
たびたびやると、さすがのゴムリングも疲弊して緩くなるでしょうから、
ここの密閉度が落ちます。
このことだけが要注意です。
注射器を抜いたときに、ゴムリングが一緒に抜けてしまうかも知れません。
このときにはゴム性の接着剤で周囲を埋めてはめ込みます。
もちろんそのときにはインクは良く乾かします。
以上で、解説を終えます。また、付け加える点に気づいたら更新するでしょう。
4月24日夜
【要点】
(はじめに書いておいた解説をあえて残しておきます。)
インク・タンクはHC(ホーム・センター)で売っている単価38円の透明ポリタンク(20cc)で
これとカートリッジをつなぐチューブに、自転車のパンク修理部品「虫ゴム」を用います。
このゴムチューブはボールペンのインク軸がぴったりの太さでして、
インク軸はタンクとカートリッジの連結部に2cmほどの長さで、使用されます。
その固定と接着にはホット・ボンド(低融点プラスチックを溶かして付けるもの)を使います。
これの補助として、ふつうの瞬間接着剤を適宜使います。
ゴムチューブは100cmぐらいの一束が150円ですから
7色を完成するのに2束要ります。
必要工具としては3mmのドリルとピンセット
当然、詰め替えインク1式と注射器数本(1本でも良い)です。
あと、消耗品として両面テープなどでしょう。
工作時間は
1色あたり、私の場合最後は慣れてきたので30分ぐらいです。
(工作の概略)
1.インクの導入はカートリッジに3mmのドリルで穴を開けてメインタンクに直接いれます。
2.動的流動抵抗を借りるため、タンクの最上面です。あける場所は適当で良いです。
3.メインタンクやスタンバイタンクの気泡は吐出孔から、数回気泡が出なくなるまで、しつこく吸引します。
4.補助タンクは封印して使いません。
封印は、青いラベルの面のインク注入経路をホット・ボンドで埋めます。
これをしないと、元々のエア導入経路から気泡が合流してしまい失敗します。
とにかく、密閉を完全にするのが最大ポイントです。
途中からエアが入るようでは、単なる上面に穴の開いたカートリッジ、と云うことで
ゴムチューブからのインク供給は起こりません。
こんなところです。
これだけでも作れると思いますが。
【肝心なこと】
追補:
次の2点が重要です。
(多くの方がこの点でうまくいかないようです。)
1 カートリッジは完全にインクを抜いて作業すること。
インクがもれてくる状態で作業しても密閉に失敗します。
カートリッジの上部のボールペン軸を差し込む穴を開けて、空気穴を開けてから
インク排出口に注射器を突っ込んでインクを抜いて下さい。
泡が出てくるだけになったらで充分です。そうしないと、
良く拭いて乾かしたつもりでも、
インクが残っていると瞬間接着剤の固化は不完全となります。
瞬間接着剤は微量の水分で固まる性質がありますが、多すぎるとダメです。
2 完成後の使用状態ではポリタンクの蓋は弛めてお使い下さい。
エア導入を図らないと、ヘッドでインクを飛ばしても、
ポリタンク内は減圧状態となりインクは降りていきませんから、
カートリッジとヘッドの結合部から空気が入ります。
純正カートリッジにもちゃんとエア導入路があったでしょう?あれは、そういう意味です。
3.完成
HCで物色していたら、スタビライザーでも使ったL字ステンレス金具がめにとまり、ひらめきました。
これに幅3cm、厚さ1mmぐらいで長さが1mの鉄板と檜の角材を買いました。
鉄板には、誠にお誂え向きの場所に、これまたちょうど良い大きさと間隔で穴が開いており、良いことずくめ。
角材にはポリタンクを粘着ガム両面テープで取り付ける予定なので、張り直すことも考えて、余っていたカーペイントを塗る。
三菱ギャラン・エテルナ用シルバーで、すこしグリーンがかかっていて、プリンタにぴったりです。
上の写真を見ればわかりますか?
【製作の感想など】
詰め替えの気泡問題はあっけなく解決し、ついでに補給時の手の汚れは皆無です。
気泡抜きを最初の一回だけ丁寧にやるだけで永久にうまく働きそうです。
☆
そうそう、インクフィルターはちゃんと通過しており目づまりは皆無です。
それに、目詰まりを解決する方法は第2部で書いておきました。
カートリッジの分解とスケルトン・カートリッジの研究から
これがベストの方法であることは確証済みです。
理論的な根拠の詳細は第2部にあります。
ICチップの問題については、永久チップを付けるのが最善ですが
リプログラマでなくなり次第リチャージしても問題ありません。
ただしその場合は全色がヘッドクリーニングを受けます。
やはり、「インク77」から永久チップを入手するのが良いでしょう。
それでこそ、連続供給で永久にカートリッジ交換なしの生活になります。
綺麗な印刷が恒常的に行えます。
2003年4月22日夜
【進化のはじまり】
完成してから2ヶ月弱、下の写真のようにいくつか改良しました。
主に、印刷中のヘッドの動きでゴムチューブが乱れないように束ねる工夫です。
また、適当なストッパーを張り付けてふたが途中で止まるようにしてあります。
さらに、実際にはこのインクタンクには紫外線によるインクの退色を防ぐ目的で
アルミホイル製のカバーがかぶせてあります。
謝辞
光による退色の可能性をご指摘いただいたCFI様に感謝いたします。
上の写真でわかるとおり、適当な太さの針金でアーチを造り、
ここからチューブを束ねる直径4cmぐらいのリングを吊します。
リングはヘッドが左右一杯に動いたときピンと張り、中央でゆるまないよう
適度なテンションをゴムチューブにかけて撓まないようにするために
普通の輪ゴムと紐で吊します。
このリングブランコの働きでゴムチューブもバラけることなく
カートリッジの動きに追随し、エッジや金具などにひっかかることがなくなりました。
☆
さらにカートリッジ側とポリタンク側の2カ所を
一本に束ねてしまえばもっとスマートでしょうが
インクの調整とかヘッドのエア抜きでカートリッジを外したりする関係上
束ねてしまうと不便かなと思っているので、このような工夫で処置しました。
下の写真で、もう少し詳しくわかるでしょう。
さらに、これだけでも不十分なことが判明し、カートリッジ取り付け枠に
さらに針金のアーチを付けました。これで完璧にスムーズな動きで印刷できます。