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スケルトン・カートリッジ
 
インク注入過程の研究用にスケルトン・カートリッジを作りました。
これを使って水を注入してみると、注入過程がよくわかります。
どのように傾けて、どのくらいの速さで引くと、どう入るか、すべてが一目瞭然です。
何回も実物で失敗して、手を汚すより遙かにスマートでしょう。
原理を理解して、始めてインク詰め替え作戦の本当の勝利感が得られます。
そして、気泡の完全なる除去はいかに難しいかが、まさしく教訓的に身にしみます。
メーカーはこれらの作業をインクの沸騰しない程度の低真空度気密室で行うようです。
経験的には多少の気泡は大丈夫のようですが。
このように、最初は補助タンクに水が入っていきます。インクが残っていますから自然と色が付いて
適度に見やすいです。ぜひ、これを作成してみましょう。理屈抜きで、きわめて教育的です。
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【スケルトン・カートリッジ作成法】

見たとおりですが、ちょっとした心理的露払いをいたしましょう。
透明プラスチック板は、東急ハンズなどの本格的素材店に行くのではなく
一枚150円の下敷きです。文房具になっている方が安いのです。なぜだか、理由は割愛。
これを難接着材料用(ポリカーボネイト、ABS樹脂、ポリブチレン・テレフタレート
などのエンジニアリング・プラスチックやステンレス、アルミなど用)の高強度弾力接着剤で、
裏をくりぬいたカートリッジに付けます。
でも、なければ弾力タイプの瞬間接着剤がいいかもね。
くりぬく方法はカッターで気長にやりましょう。
私は、半田ゴテの先にカッターの刃を付けて切れば楽勝と思い、針金でくくりつけてやってみましたが
大したことはありませんでした。まあ、持っている人はやってみましょう。
カッターでの切り込みには、ちょっとしたコツがあります。
1度目を切るときはカッターの刃は楽に動きますが、深くなってくると抵抗が増えて重くなります。
無理をするとケガをしますから、斜めに傾けて溝をV字型に掘っていく要領です。
基本的にはカートリッジの材質はさほど堅いものではありません。
むしろ、粘っこいプラスチックですから、
Vの字切り込みは極端に云えば「チーズを切るようなものです。」
って、ちょっと言い過ぎですが。

これで、少しはやってみる気になられたでしょうか?
 
【教育効果】

下の写真が、ほぼ完璧に充填した状態にたどり着いたものです。


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これにより、プッシュプル注入法がどうやらベストであることが結論されました。
それも、原案の正規の注入孔と排出口からやる方法です。

ここに至るまでには、かなりの試行錯誤があります。

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フル・チャージしたカートリッジの重さを量りました。わたしの自作のいい加減な割り箸天秤で47gあります。
この写真、妙に芸術的な理由はプアマンズ・ツインストロボで撮っているからです。
じつは、先のカートリッジにはまだ気泡がインク・クリーナとスタンバイタンクに少し残っていて、
それがインクと入れ替わればもう少し重くなるでしょう。
でも、これくらいが目標値であることが視覚的に確認できた功績は大きいです。
スケルトンはえらい!

人の心もスケルトンになっているといいですよね。
3月25日


【詳細説明】

概略を理解された方に、もうすこし詳細をご説明いたします。
インク排出口の構造は、すこし尾籠なたとえではありますが、肛門に酷似しております。
非常にしまりの良い合成ゴムの気密用弁膜が肛門部、失礼、インク排出口にあって、
プリンタ・ヘッド側のインク供給口(覗くと見える黒い先端がイボイボ状のもの)を
差し込んだ後の気密性を確保しております。
ここの、ゆるみはインク供給の大きな障害となるでしょう。空気が入るとたちまちインクは切れます。
そうならないように、エプソンも気合いを入れてここを作ったようです。
色崩れの現象に出会った当初は、ここも疑ったところですが、このゴムのしまりを見ると
原因は違うところにあることを思い知りました

ちなみに、一番表に張ってある透明な膜は出荷間の長期保存(インクが乾かないように)するためのもので、
穴が大きくなったからと言って、張り直すのは愚です。
その奥の灰色のゴム弁膜は、耐久性がかなりあります。
いわゆる過剰性能です。もっというと、このカートリッジ全体が過剰性能です。
日本的、過剰性能の極みです。
この奥には、ちいさなステンレス・弦巻バネがピストン弁を押していて、
カートリッジがヘッドに装着されて、はじめてインクが落下する仕組みとなっております。
このピストン弁を押し抜くと、その向こうには人間の直腸に相当する通路があって、
そのさきに逆流防止弁があり、さらに小さな孔を通って例の丸い形のスタンバイ・タンクへつながります。
さて、この一連の複雑巧妙な部分が、同時にインク注入を阻む構造であります。
ここの部分の気泡はかなりしつこくて、その除去法はまだ未解決です。

スケルトン・カートリッジで得た教訓を列挙します。

(1) 最初にはオーソドックスな吸引注入法─オルソ法──

略してオルソ法で入れていくしかない。
それ以外のポイントからも入るが、いずれも単発では不完全である。

(2)完全な注入は複合技で
 
オルソ法、プッシュプル、エアクリーナポイント等、複合して入れなければならない。
オルソ法も万能ではなく、まったく空になったカートリッジを詰めることは不可能である。
エア・クリーナ以降のスタンバイタンクなどは、いつまでもインクが行かないことが、
スケルトン・カートリッジではじめて確認できた。
その後、プッシュプルに切り替え、必要ならばエアクリーナ・ポイントから気泡抜きをする。

(3)注射器のピストン吸引は急速にやるのが正しい

こうすると、しつこかった気泡がしんぼうできずに出てくるのが確認できた。
ゆっくり引いたのでは、気泡は出てこない。で、出てきたら直ぐに押し込むと良い。
これは、カートリッジの筺体の強度を維持する意味でも大切なようで、
あまり長い吸引状態で低圧を続けると、プラスチックの合わせ目に裂け目が生じるおそれがあった。
そのあと自然に戻るのを待っている必要は全くなく、力で強制的に押し込むことが有効である。
さらに、この処置は時間の短縮にもなる。


(4)カートリッジの向きが気泡抜きには重要である。

これもスケルトンだからこそ解ることであるが
気泡は結構動きは軽快で、常に重力と反対方向に行こうとして動き回る。
で、タンク内に設けられた連絡孔のところにないと吸い出せない。


(5)スタンバイタンク(直腸側ではなくこちら側)の気泡は、致命的。

これはすでに解っているが、インクを使い切る末期にひどくなることが判明。
インクが出て行き、タンク内に空気が入ってくる。
これが補助タンクにある内は全く問題がないが、空気がメインタンク内に入り始めると
蛇行迷路からエアクリーナへ、さらにスタンバイタンクへ入る動きは円運動であり、
めまぐるしく気泡が巻き込まれて砕紛化される様子が見て取れた。
何故ここが丸いのか、の理由は逆流防止弁の形から来ていると思ったのだが、
どうもそう単純ではないのかも知れない。
インクの流れを蛇行したり、円運動させたりすることで適度な流動抵抗を作っているフシがある。
こうしないと、スポンジ方式でないこの手のタンクでは、不必要にインクが垂れるからである。
適度な抵抗。これは植物の導管や師管に於いて、水や養分の水溶液が一定速度で流動する
あのメカニズムと基本的に同じである。
スポンジ方式は、スポンジの気泡がもつ広大な表面積がもたらす吸着力で、
しずくのたれを止めているのである。
エプソンはこれを画期的な動的メカニズムで乗り越えた。
これは素晴らしい。
しかし、インクが残り少なくなると、このメカニズムは破綻する。
だとすると、エプソンのこの方式では運命的にインクは全部使い切ることは不可能である。
なぜならば、末期のインクには一杯気泡が混じることになり、完全なる印刷を保証できないからだ。
それで、まだ1/3のインクが残っているのに使い終わるようにしているのである。
そのタイミングを決めているのはICチップだ。
つまり、ICチップは詰め替えを防止しているのではなく、
綺麗な印刷だけして終わろうとするエプソンの仕業なのだ。

ここまで考察してきて、私の腹は決まった。
このエプソンのメカニズムを生かし切るのは永久サイクルしかない。
すなわち、インクを恒常的に供給し続けること。業務用印刷機でやっているアレだ。
コンシューマ・タイプのプリンターでは
このカートリッジがやっている動的流動制御方式は過剰性能である。
これは、多量に印刷するプリンターでこそ意味を持つものである。
何日もかかって、ちまちまと数枚印刷しては、しばらくヘッドは乾き、
全体で何枚印刷したか覚えていない人には、安いスポンジ(静的抵抗)方式で良いのだ。
なんで、こんなに凝るかね。
ただ、インクさえ恒常的に供給できれば、この(動的抵抗)方式がインク濃度が一定に保てるために、
結果的に、最高峰の写真画質を誇ることが出来るのだ。
結論を述べると、私はこのプリンタを業務用方式に改良することに決めた。
構想は既にある。
ヒントを云うと、スタンバイタンク以降を利用する。

しかし、ほとほと感じ入るね。このカートリッジは。
見れば見るほど立派な建造物を見る思いだ。ほとんど、惚れてしまった。

3月25日夕方

6.PM−800Cカートリッジ

PM−800Cカートリッジについても研究しましたが、
ずいぶんと簡単なことがわかり、PM−950Cでの苦労が嘘のようです。
写真を縦にするのを忘れるくらいオルソ法(吸引注入法)で簡単に入ります。
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私の方法は空気導入孔を塞いでやります。ここが違います。
下の写真のように、アルミテープで密閉し、上のように吸引するとタンク内は減圧され、
スポンジの中の細かい泡が「ジュー」と出てくるので、そのまま押し込むと下になったインクが入っていきます。
また、強制的に押し込むのがスケルトン・カートリッジの研究から有効であることが解っております。
押し込むとインクも速く入り、時間短縮と同時に泡がつぶれてインク中の気泡が消えてくれるのです。
気泡の残ったまま吸引注入しても、また泡が入っていき、ずいぶん時間がかかることでしょう。

すこし、注射器を傾けて、カートリッジも向きを変えると気泡が抜けやすくなるようで、
垂直のままではうまくいきません。これも大切なコツです。

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すると上に溜まった空気の分だけ、インクと入れ替わったことが確認できます。
このタンクは5〜6ccインクが入れば良いようです。
しかし、考えてみるとこのカートリッジは実売1個1200円ぐらいでしたよね。
5色入って、その値段ですと、PM−950Cのカートリッジが5色で4500円ぐらいでしたから
インク量の比6/12をかけてもPM−950Cは2倍ちかくランニングコストがかかり
コストパフォーマンスが悪いことが確認できました。やっぱりね。



7.インク詰め替え時の手の汚れ
最後に、ちょっとした雑記.

インクの詰め替えは手がどうしても汚れますが、私の裏技を一つ紹介します。
海軍爺様は親切にも、詰め替えの後の手の汚れを落とすには、頭を洗えと書いておられました。
ようするに、風呂に入れば結構落ちるのですが、詰め替えるたびに風呂に入り、
頭を洗うわけにも行きませんので、考えました。
洗濯用のハイターの原液で洗うと、嬉しくなるほど色は消えます。
その直後に人前に出るときや、急ぐ場合に有効です。
要するに、塩素による脱色です。
ただし、一つ欠点があるので念のために書き添えます。
塩素の匂いがかなり残ります。
だから、見た目に綺麗になる必要があるときにだけやりましょう。
この匂いには私自身かなり閉口しておりますので
つぎは、塩素を中和する化学的手段を開発しなければいけません。
なにが良いですかね。

【画期的効果】
このHPに寄せられたSimizu様(お寿司やさん)より耳寄りな情報です。
「酢で洗うと完全に塩素の匂いが消えます。」
やってみましたが、本当に瞬時にハイターで洗った後のぬるぬるも消え匂いは消滅。
素晴らしい効果です。ありがとうございました。みんなでSimizu様に感謝!
6月3日深夜

さらに、付け加えると、6項のPM−800Cの詰め替えでは、
インクの吐出孔から直接注射器で注入できますので
PM−950系のカートリッジほど手は汚れなかったことを強調しておきましょう。
全くと言って良いほど手を汚さずに詰め替えられます。

PM−950系のカートリッジで、何故手が汚れてしまうかというと
カートリッジの注入孔に両面テープを貼り
アダプターをつけてから注射器を差し込みますが、
この両面テープの接着面がどうしても不十分になるので
インクがそこから漏れることと、そこを剥がし、シールを貼る作業の途中で
どうしてもインクに手が触れるのです。
かといって、うすいビニール手袋をして作業すると、両面テープに手袋が粘着し、
剥がそうとすると手袋はやぶれ、役に立たなくなります。
てなわけで、私は素手で詰め替え作業をするので汚れるわけです。
その他、この詰め替え作業は複雑で手間がかかるために
色々な事故が起こり、インクがこぼれます。
それをテッシュ・ペーパーで拭き取るときにも手が汚れます。
特に、シアン系とブラックなどの汚れは
本来人間の手にない色ですので目立ちます。
如何ともしがたいことです。
そんなこんなで、連続注入法式を検討しております。

ひとつだけ良さそうなアイデアがあります。
あらかじめ手にワックス系の油をコーティングしておく方法です。
爪には蝋(ろう)を詰め込んでおくといいでしょう。
あるいは、ニベアを塗っておくのが良いかな。
そうすれば、インクの汚れは皮膚に直接つきませんので
あとは油等を石けんで落とせばよいかな、と思っております。
ただし、まだ試しておりませんのでアイデアだけです。
そのうちに結果を報告します。
追記
この記事を読まれた方から
「グローブ使っての手袋の破れについては、
テープの粘着強さがさほど出なくて良いなら、傷用のバンソウコウの粘着力なら
破れませんよ。油手に塗っての作業で差し支えないなら、グローブの上からワセリン
つけて作業するのが良いと思います。HCでよく売っているビニールグローブがよいでしょう。」
というアドバイスを戴きました。
本当に感謝いたします。


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