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インク流量計
入間市在住の本吉 明生氏より寄せられた
アイデアと本体制作品をご紹介いたします。
2003.11.10.
連続供給システム制作記事に登場した入間市在住のA.M.様こと本吉氏から、
10月19日、インク流量についてのアイデアがあるとのメールが届きました。
インクタンク上部につないだチューブの途中に色水を置き、
タンクのふたをきっちり閉めると、インクの消費量によってタンク内が減圧され、
この色水が移動するというすばらしいアイデアです。
このときの予備的な実験結果には、ヘッドクリーニングを実行したときに
均一に減るはずのインクが、カラーごとに減り具合が違うという結果が出るというものでした。
これは興味深い現象です。
なぜならば、ヘッドクリーニングとは全ての色のヘッドノズルを
ポンプユニットのバキュームが一定の量を吸い出して、
ノズルの状態を良好に保つという処理だからです。
色ごとに違うと云うことは、
インクの流動抵抗や粘性から始まり、
カートリッジの状態、すなわちエアの残留量やフィルターの状態、
ヘッドのインク吸入ノズルの密着度やヘッドノズルの目詰まりなど
全体の要素全て含んだ、いわば健康状態が
色ごとに違う情報を表していることに他ならないからです。
☆
このアイデアの重要性を認識し、本吉氏にアイデアの具現化を求めましたところ、
ほどなく、以下の写真にありますような実用的な製品を二つも同時にお作りになり、
その内の一つを送っていただきました。このような丁寧な製品化された出来具合であります。
横倒しの写真で申し訳ありませんが、実際にはこれを立てて使います。
当初の、途中に色を付けた水をおく方法はリセットが面倒であると云うことで
石けん水の吸い上げによる表示方式とし、
リセットは途中に分岐したエア導入チューブのねじによる開閉で行います。
次の写真が裏側の構造です。
一番下におかれたポリタンクには7色用のパイプが付けられておりまして
これが表示側の0から1.5ccまで目盛りが付けられたチューブへつながります。
この一番上にはT字型の分岐パイプが待ちかまえており、一つはインクタンクへ
もうひとつはエア導入チューブにつながれております。
エア導入チューブの途中にこの字型の鉄製支柱を短く切ったチョーク弁の役目をする金具があり、
ダイアルによるねじ締めで、全てのシリコンゴム・チューブをつぶすことでチョークします。
すると、新たなエアの導入はなくなり、インクタンクの空気の減り具合に応じて
ゲージとなったチューブを石けん水が登り始めます。
おわかりのようにリセットは、チョークを解けばエアが導入され、
吸い上げた石けん水は重力で全て下に落ちます。
このようにして、ダイアルを回してチョークすると計測、チョークを解くとリセットという
きわめて簡便なインク流量計測ができるものができあがりました。
上の写真のエア導入チューブの先には、
タッパを利用したカビ胞子などの遮断などを目的としたエアフィルターが付けられており、
きわめて配慮の行き届いた設計となっております。
また、真鍮を使ったT字連結パイプは半田付けによる手製であり、
細工も丁寧で見れば見るほど手先の器用さと、氏の人柄を偲ばせるものです。
この部分は、もしかするとペットショップに売っている水槽用のエアブランチ金具を利用すると
一般的かもしれません。ただ、その場合はビニールチューブの径を変えないといけなくなり、いずれにしろ
工夫が必要です。
アイデアから制作まですべて本吉氏の仕事であり、知的所有権は本吉氏にあります。
この装置を使用しての成果報告は少し後回しになります。
現在、私の頭の中には、さらに画期的な連続供給システムの改良版があります。
それを完成してから、この装置を使って、いろいろな調整をしたいと思います。
【使用結果】
新しく作りつけたPM−980Cの連続供給システムにつないで使ってみました。
後ろのタンクにマゼンタのあまりを入れ中性洗剤を数滴と水を加えてゼロ点調整をします。
そのスタンバイ状態の写真が次のものです。
紫外線防止のアルミ箔で覆ったインクタンクからは仮繋ぎのビニールチューブが計測器へ。
プリンタを起動すると大体どの色も0.07ccぐらいの軽いクリーニングをして
スタンバイとなります。再びリセットして、今度はヘッドクリーニングをしてみますと
一挙にゲージはサーっと上昇し、下の写真のように0.3ccから0.4ccぐらいの
間のインク消費量となります。
上の写真は私のシステムのデータでして、
送ってもらった元吉氏自身の測定データでは、
カートリッジの色ごとのばらつきは似たようなものですが
私の2倍以上の値です。
(濃黄) 淡赤 淡青 黒 青 赤 黄
連続 0.75
0.71 0.69 0.78 1.10
0.82
純正 0.86
0.82 1.23 0.80 0.85
0.75
このように純正カートリッジの場合も測定してもらいました。
純正カートリッジの空気取り入れ孔は青いラベルの上の方にあり
そこからの空気流量を測定するべく、元吉氏は工夫されております。
このように、右側の写真のEPSONの文字のPとSの間ぐらいのところに空気取り入れ口の
ための溝があります。ここを2mmの真鍮パイプで測定すべく
ホットメルトで余計なでこぼこを埋めて、左の写真のようにアルミテープで密閉し、繋ぎます。
この真鍮パイプに測定器のエア・チューブをつないで計ったものが上のデータです。
私のプリンタPM−980Cの連続供給システムでは上の写真のように
最大0.45cc最小0.23ccという結果はどう解釈すればいいのでしょうね。
PM−940Cはデザインから判断するにPM−980Cの同時期姉妹品ですね。
クリーニング用のポンプユニットや、ヘッドの構造は似たようなものでしょう?
純正のカートリッジの場合も似たような結果ですので、
私のシステムが異常に低いことだけが印象に残ります。
PM−980Cはインクがぶ飲みプリンターではなくなったということですか?
更に詳しい分析はこれからですが、とりあえず
『一回のヘッドクリーニングをやると0.4ccから1ccぐらい減りますよ。』
ということがわかりました。
これは1歩前進です。