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カートリッジの分解と解析

http://www.urban.ne.jp/home/simtrick/Macintosh/mac23/
にありましたように、私もカートリッジを分解してみました。
インクがどのように詰め替えられるのかを知らないと
要らぬ想像をして変なことに力むことになるからです。

封印が緩んできてインクのにじみがひどくなり捨てようと思ったカートリッジをカッターで切り開いたところです。
溝に沿って、数回カッターで切り込んでいくと、簡単にこのような状態になります。
このカートリッジ、振るとちゃぷちゃぷという音がして、残っていることはわかっていましたが、
開けてびっくり、内部にはこのようにたっぷりとインクが残っていました。

EPSON_ALL.JPG - 77,472BYTES

インクの入るタンクは迷路のような仕切で区切れれていて、大別して3つのタンクに分けられます。
上の写真で、フィルムでカバーされた部分は内部にまだインクがいっぱいつまっていますが、ここがメインタンクです。
ここの中央部に丸い仕切がありますが、その仕切の底に二つの小さな孔が見えますね。
この向こう側には小部屋があって、合成ゴム製の逆流防止弁があります。
(これらについては、以下の写真で明らかになります。)
この弁の向こう側がプリンタの吸引ノズルへ直結する、人間で云えば直腸に相当する構造が付いています。
この丸い部分と逆流防止弁とをあわせてスタンバイ・タンクと名付けます。
メインタンクの外側にフィルムでカバーされていない部分(この写真では上部)にも、インクはつまります。
ここは予備タンクといいましょう。インクが消費されると、真っ先になくなる部分です。
それぞれのタンクは、セットした状態(上下逆)で一番下になるところに小さな連結孔が開いていて
最後までインクに浸っていますから、サイフォンの原理で次のタンクへと吸い上げられていきます。

EPSON_BACK.JPG - 60,656BYTES

上の写真は、プラスチックカバーを剥がした面の裏です。ここにはメーカーのEPSONという文字と
「この青いラベルは、はがさないでください。」
と書いてあります。
はがしちゃうもんね〜。
青いラベルをはがしても、機能的には何の問題もありません。
その下に剥がれにくい薄いフィルムが張ってあって、細かい迷路が見えます。こちらは本当に剥がしてはいけない幕です。
だから、青いラベルは保護膜でしょう。
ご覧のように、吸引ノズルからのインクの導入ルートが透明なフィルムによって見えています。
見て楽しむものではないのに、アリの巣を観察しているみたいで、面白いです。
それと、中央右に、青い文字が斜めに数本印刷された
長方形の空気フィルタらしきものが見えます。
後ろのポリ瓶は、注射器で回収したインクをいれました。8cc以上はゆうにあります。

いつまでもインクを残しておくと手が真っ赤になるので水で洗いました。
かつ、2枚のフィルムをカッターで破きました。
EPSON_WATER.JPG - 51,982BYTES

上部右側がプリンタの吸引ノズルが刺さるインク排出口です。ここにはバネ式のピストン弁が付いていて
プリンタから外したときにインクが流出するのを防ぐ働きをしております。
インクを注入するクチは左の丸いパイプです。
次の写真で判るように上下の丁度真ん中のところにメイン・タンクへの導入孔が開いています。
かつ、この写真で判るようにインク注入口は半分が補助タンクへと開いておりまして
インクは同時にメイン・タンクと補助タンクに入ります。
すぐ横にも補助タンクへの穴が開いているのですが、用途は不明です。
写真右下方の小さな丸いピンク色の部分は、インクフィルタです。

つぎに、ちょっとわかりにくいのですが、下の写真で、上部の黒っぽく写っているのはステンレスの板バネで
カートリッジをセットしたときにガイドに押されて、空気注入弁が開く仕組みとなっております。
こうしておかないと、刺していないときにも空気が入って、インクボタ落ちとなります。おわかりですか?
取り外したときにはいたバネが蓋を押して空気のはいるのを防ぎます。
空気が入らなければインクは落ちないのです。

EPSON_IN.JPG - 54,790BYTES

先ほどのメイン・タンクの中にある丸いスタンバイ・タンクには、
二つの小さな穴の開いた丸いプラスチック板があります。これをカッターで切り取ると
このようなものが出てきます。これは柔らかい合成ゴムの逆流防止弁です。
この弁の向こう側がプリンタ吸入ノズルの刺さるインク排出シリンダがあります。、
向こう側に吸われたときだけ、弁が凹み、こちらのインクが移動します。
切り取ってしまったけれども、ここには平らな板が押しつけられていたことをお忘れなく。
したがって、カートリッジのインク排出口からは絶対にインクを注入できないのです。
向こうからインクを入れようとすると、この合成ゴムのドームがこちら側にあったラスチックの壁に押しつけられて
孔が高い圧力でふさがります。うまいことを考えたものです。
この逆流防止弁はなくてもプリンタへのインク供給は可能です。
ただ、ここの弾力により発生する負圧がインクの過剰供給を防ぐ意味はあります。

EPSON_BULB.JPG - 56,469BYTES

下の写真は、スタンバイタンクへ水を入れようとしているところです。
水を入れた注射器の先は丁度このピストン弁のなかにすっぽり入り密着しますが、
正常な状態では今見えている合成ゴムの弁の上に蓋がしてあって、
注射器のピストンは押してもちょっと入って直ぐ止まります。
この写真のように蓋を切り取ってしまった状態では逆流防止弁は働かず、下の写真のように水がいくらでも入っていきます。
赤く見えるのは水によって残っていたインクが押し出された結果です。
分解していないカートリッジでこれをやると、注射器は押すことはできませんが引くことは容易です。

EPSON_PISTON.JPG - 63,501BYTES

このようにタンク内は一見複雑に見えますが、これはインクを効率よく吸い出すためのサイフォン構造でして、
インクと入れ替わりに入る空気は上下反対の上のルートで統制されて吸入されるようになっています。
ところで補助タンクとメインタンクとは設置した状態では一番下でつながっておりますが、
メインタンクとスタンバイタンクとは逆流防止弁で水平につながっております。
この部分の連結はもはや重力では分離せず、吸引の負圧でインクが移動します。
インクはこの構造により、まず補助タンクが空となり、次にメインタンクが吸い出され
最後に中心部の丸い部分の向こう側のスタンバイタンク内のインクが吸われて空になります。
ただし、ICチップのせいで、全部使われることなく、交換されるのが常です。


さて、このような構造をしておりますから、インクを詰めるときはここでの写真のように
注入口を上にして、メインタンクを下に、補助タンクを上にするのが正しいことが判ります。
空になったカートリッジのエアを抜きながらインクを注入する方法も正しいことが判ります。
注入中に少し振ったり、たたいたりすると、引っかかった空気の泡が出やすくなることも考えられます。
分解して開けたときに、メインタンク内には気泡がいっぱい見えました。(最初の写真参照)
本来これは迷路の途中にはない方がインクの供給はスムーズになります。

インクが吸い出されると、かわりに空気が入らなければ成りません。この空気導入は非常に込み入っています。
下も写真は、先に述べた板バネで開く空気取り入れ口のゲートです。

E_MASENTA_AIR.JPG

板バネを持ち上げて折り曲げてしまい、その下に押しつけられていたキノコ型の弁を抜き出して見せたものです。
お分かりになるでしょうか。キノコ弁は空気の通り道の上にひっくり返して置いてあります。
そのキノコの直ぐ左に開いている小さな四角い孔から補助タンクへ直接エアを送り込みます。
補助タンクが空となった時からインク注入口を通して空気がメインタンクへ入っていく仕組みとなっております。
原理的には、このときまでメインタンクやスタンバイ・タンクに空気があってはいけません。
さて、板バネは分解しないカートリッジを外から見ても見えませんが、
薄いフィルムカバー1枚が覆っているだけですからどこにあるかは最初の写真や3枚目で判りますね。
さて、この空気取り入れ方にはエプソン独自の妙技を見ることができます。

その空気取り入れの妙技をご覧ください。下の写真の全体に妙な模様が表面を走っておりますが
私の観察結果では、実際に空気が入っていくルートは右半分の櫛形迷路です。
まず、下の中央右寄りに開いた穴から入り、一回右にヘアピンカーブをしてからまっすぐ上に行き
5
回ヘアピンカーブを曲がってからまた下に行き、この長方形の青い文字が4本斜めに印刷された
フィルターに入ります。フィルターをはがすと丸い小さな穴がこの下に開いておりまして
いったんこの写真では右上にある構造へ導かれてから、板バネの空気ゲートへと導かれます。
そして、プリンタヘッドへの差し込みと同時に板バネが後ろから突起により押されて、ゲートは開きます。
このときに、非常に狭い隙間が作る微妙な流入抵抗により、むやみと空気が入るのを制御し、
インクノズルからの吐出量に応じた分だけ空気は入れ替わるのです。

EPSON_URA.JPG - 50,040BYTES

下の写真は丸いキノコ弁が塞いでいた孔に、注射器で水を送り込んだところ
ご覧の通り、上の細い迷路に残留していたインクが出てきたことを示すもので、
あきらかに空気の通る道が連結していることを示すものです。
ちなみに、この部分にインクがあるのは支障ないと思いますが、
キノコ弁のゲートを超えて、フィルタの方までインクが出て行くと、まずいでしょう。
櫛形迷路が液体で埋まると、空気は通らなくなり、インクの吐出量は著しく減るでしょう。
これは色バランスの崩れの原因の一つとなります。
E_MASENTA_WATER.JPG

実際に、自分でこのように分解してみないと、究極的には腑に落ちないでしょう。
ヘッドとタンクの分離は、ヘッドの精度向上にとって必要なハードルでした。
そうして、分離したタンクからのインクの安定供給を図るには、このような凝った迷路が必要だったのです。
エプソン殿、ご苦労様でした。しかし、ICチップによってインクの詰め替えを禁じることは
必要だったのでしょうか。このような凝った構造を造り、チップを付けたことの結果としてカートリッジの値段は上昇し、
かつ、インクは使い切ることはできず、振るとちゃぷちゃぷ鳴るカートリッジを捨てる羽目に相成り申した。

さあ、どうしてくれましょう。
今日のところは、これまで。
2月28日深夜

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