目次 Counted Since 2003.4.1 光学の杜
【水割り・カクテル法】
インクの濃度による印刷の不首尾に関して、
画期的な解決法を発見しましたので発表します。
きっかけは「インク連続供給システム」を早速自作された
ATOMIC様から、「連続供給システム」は全く問題なく作動するが、
インクが純正と違いカラーバランスが崩れているというメールでした。
「爺様インクは黒とシアンが薄いようにおもわれる。
また、濃すぎると思われるイエローとマゼンタを
水で薄めてみた」という内容でした。これに対する
私の返事を、まず急遽掲載します。
そのうちに、整理して書き直すつもりでしたが、
ある意味わかりやすい面もあるので、少し書き足して
そのままにしておくことにしました。
『 転載開始 』
こちらにまとめて御返事いたします。
黒とシアンは純正で、マゼンタとイエローは2割水割りの状態で
ウエルバランスということですね?なるほど。
私も、水割りのアイデアを戴き、やってみました。
PM−950Cはダーク・イエローがシャドー部階調の改善に使われるはずですが、
シャドー部がつねに赤茶色にかぶり悩んでいました。
原因はやはりダークイエローの濃すぎでしたかね。
これに勢いづいて、色々実験してみました。
【 実験 】
(1) ダークイエローおよびマゼンタの水割り→シャドー部の赤み取り(成功)
(2) ライトシアンにシアンを混ぜ、ライトマゼンタにマゼンタを混ぜんた(しゃれ)→彩度アップ(成功)
(3) イエローの水割り→緑かぶりの除去(純正の時からエプソンは印刷の暗部が緑っぽかったのを嫌って)(成功)
以上、ATOMIC様の水割り作戦と
私のカクテル作戦の共同戦線は全戦全勝でした。
ということは爺様インクの黒とシアンなどが薄いという結論になりますが、
慎重に考えた結果、これも「ちょっと待った!」かも知れません。
カートリッジへのインク注入の問題を完全にクリアしないと断言できないかなと思っています。
私のこれまでの経験から、ブラックは気泡が入るとなかなか消えず、
まるで界面活性剤が入っているようでした。
ライトシアンとライトマゼンタも気泡が消えにくいインクです。
これに反してイエローとシアン、マゼンタは気泡が消えやすいインクです。
このような事情もあって、何度も気泡消しに苦労するインク詰め替えを放棄し、
「連続供給システム」に向かったのでした。
エア抜きや、インクの連続性は、インクそれぞれの表面張力、界面活性、粘性などの違いが当然あって、
複雑に関係し、インクによってその容易さが違うのではないかと思います。
ブラックはそのなかでも難しいのでしょう。
かく言う根拠は、私の方では純正カートリッジに変えても
症状の改善はありませんでした。
つまり、暗部の茶色かぶりは変化なしです。
そう言うわけですから
もう一度、せっかく作ったのですから、
黒とシアンのカートリッジの点検をしても良いかも知れませんよ。
ここまでが、インクに責任はないという立場での話です。
【 インクの違い 】
もしかすると、たしかに、薄いのかも知れません。
ただ、インク濃度は製造過程では濃縮されていて、
出荷時に希釈されてアルミパックに充填されるはずです。
すると、そのときにかならず色の濃さは正確に純正と比較し希釈されているはずなので、
それほどの違い生じないと思うんですよね。
ただ、濃さは同じであるがその他の性質が違うかも知れません。
「インク77」がエプソン純正インクと成分的にどう違うかなどは
海軍爺様に聞かないと何もわかりませんが、
もし、違いがあるとするなら、それらの物性的な違いかも知れないと思うようになりました。
あまり違いがあるとは思えませんが、ピエゾ素子による2ピコリットル吐出の際にも、
帯電量などに、もしかすると微妙な差が現れるにかもしれません。
ただ、過去の記憶では一番最後に詰め替えたダークイエローの時から、
「色崩れ病」がはじまり、第2部での研究が始まった
経緯もありますので、当方の主たる張本人はダークイエローの濃すぎですかね。
ダークイエローだけは作るのが難しいらしく、
爺様のHPにもこれを作れるのはうちだけだと云っていましたから。
このあたり、まだ未完成だったか調整不十分だったのかも知れません。
いずれにせよ、結果的に吐出量のアンバランスが生じているわけで、
爺様も希釈時の見た目の濃度ではなく、
印刷結果で希釈量を決めていてくれれば良かったのでしょう。
ここまでが、仮に爺様が不覚を取ったと仮定してのことです。
【 濃すぎるインクの可能性 】
しかし、思うに、仮に印刷結果でばっちり較正してあっても、
ユーザーに渡ってからの使用形態がまちまちで、ここで問題が生じます。
たとえば、次のようなことです。
ドライバによる補正が入ると、
これはエプソン純正インクに対するドライバ補正ですから、
ひとつの印刷モードや紙で希釈バランスを取っても、ダメです。
おそらく、すべての紙や印刷モードに対応し尽くすことは不可能でしょう。
ドライバによる補正を「なし」にしたことありますか?すごいことになりますよ。
インクのカラーバランスは元来ソフト的にも、もの凄く取っているのです。
そして、エプソンは自前のインクで
その全ての場合の補正量を決めているに違いないのです。
このあたりも、詰め替えインク業者の苦労は並大抵ではないでしょう。
試行錯誤をやっているはずですよね。
つぎに、かりに試行錯誤をやって、
純正を殆ど同じに調整できたと仮定しましょう。
しかし、そのときのカートリッジは詰め替え業者の使用したもので、
ユーザーが詰め替えたカートリッジではありません。同じ条件とはいえなくなります。
次のことは重要です。
出にくいカートリッジで印刷結果が同じになるように希釈したら
濃すぎることになります。
逆に、薄く希釈する可能性はありません。
(純正より多く出るカートリッジで印刷結果を合わせた可能性はあるでしょうか?)
純正カートリッジと同じ完璧jな状態の詰め替えカートリッジで調整してあれば、
純正インクと同じ結果を生むインクとなります。
だから、爺様がまじめに仕事をしておれば、濃すぎることはあっても、
薄いインクは決して出来ないことになります。
───以下省略───
『 転載終了 』
このように議論した結果、インクは素材であるという結論に達しました。
すなわち、プリンタで印刷することは、絵を描く作業と同じであるという結論です。
メーカー純正インクを使い、プリンタドライバやオートファインで印刷すると云うことは、
それなりの金額を払って、メーカーに自動絵描き機を動かしてもらう所作です。
一方、こちらは全くの手動すなわち手書きでは、もちろんありませんが、
色に関して注文を付ける態度です。
すなわち【水割り・カクテル法】の理論です。
まさしく、酒を嗜む話に似ております。
お茶にしても味噌にしても、混ぜると味が深くなると云うではありませんか。
もっとも、3原色ならぬ7原色の配合の話はちょっと違うのですが、
結局素材として見ていることには違いはありませんね。
☆
くれぐれも注意しておきたいことがあります。
海軍爺様のインクは問題ないと考えるべきです。
純正以外のカートリッジに自分で「詰め替え」と「連続供給システム」
でインクを入れたからには、第2部でしつこく述べたとおり、
インクをどうのこうの云う権利は、もはやありません。
それ以前に、気泡と気密漏れなどの不具合を内包している可能性があるからです。
それは、私も同じです。
以下述べる、私の対処療法にしても
私のシステムの「個性」にあわせた処方箋です。
そして、ここが大事!
インクの詰め替えや「連続供給」をやろうという、自立心に目覚めたからには
素材を吟味するのはいいとしても、分量は自分で決めるのが本筋です。
料理も味見をしてはじめておいしいものが完成します。
薄かったら多めに入れるし、濃かったら控えめに入れますよね。
ここまできたら、分量まで自分で調整して、なんの不思議がありましょうか。
謝辞
水割りのアイデアはATOMIC様のものです。
これがきっかけでインクの問題点がクローズアップされ、
【水割り・カクテル】理論が完成し
すべては解決しました。
カラーバランスの崩れの救世主です。
ここに、明記すると共に、絶大なる感謝の気持ちを表明いたします。
☆
【 私の場合のレシピ 】
(1)ダークイエローは3割ほど水割りをする。
(2)イエローとマゼンタは2割ほどの水割り。
(3)ブラックとシアンはそのまま→濃縮する方法はないものか。
(4)ライトシアンにシアンを4割混合、同様に
ライトマゼンタにマゼンタを3割混ぜんた。→カクテル
【 次にドライバ補正の詳細設定】
(1)明度は−8に落とす。→色を濃くする
(2)コントラストを+4にする。→画像のひきしめ
(3)彩度を+3にする。→綺麗なのが好きなので。
これで、ディスプレイの絵と全く同じ色調で印刷されます。
☆
というわけで、私自身も久しぶりに印刷が楽しくなるほどのできばえでご機嫌ですよ。
とくに、カクテル法によりエプソン純正より写真っぽくなったおまけも付いております。
派手な印象が薄れ、画像が落ち着いております。
ぜひやってみて下さい。インクに水を混ぜたりするには、
1.連続供給システムでは
ポリタンクに適量の水を入れ、カートリッジを外し、
インク排出口に注射器を突っ込み吸引すること4,5回
これで、ほぼシェイクは完了
2.詰め替え作戦では、
インク注入孔から適量の水を入れてから
何度かプッシュプル法で吸引注入をくりかえし、中身をブレンドするのです。
(いずれもクリーナーを通った塩素の入っていないものが望ましい。)
2003年5月5日(こどもの日)昼前
【デリケートなインクの調整】
その後の経験から、次の点が明らかとなりました。
ただし、この調整もカートリッジの個性とプリンタヘッドの状態で
大分変わることを承知して置いてください。みなさんのプリンタ毎に違うと思います。
1 マゼンタをあまり薄めると深紅のバラが濃いめのピンクになります。
それと、枯れ葉の色がくすんだ色となってしまいます。
皮膚の陰の色も白っぽくなり、肌色のピンクと逆転しておかしな顔色となります。
ノズルチェック印刷でライトマゼンタとのバランスを確認しましょう。
感覚的にライトマゼンタより2倍ほどの濃さにします。
しかし、マゼンタを薄めないとブラックやシアンとのバランスが崩れます。
2 イエローはほんの少しの水割りが良いでしょう。
あまり薄めると気持ちの良い木質の肌が失われます。琥珀色がでません。
3 ライトシアンの希釈は好みが分かれます。
好みで、シアンをカクテルします。私はちょっと強めが好きです。
もともとシアンが薄いのでこれの補強をする感じです。
4 やはり、ダークイエローは薄めないと暗部が汚くなります。
<4は最も重要>
ダークイエローについてはシアンをカクテルするアイデアもあります。
そのうち実験をします。
6月3日深夜
【インクが全くでない?】
印刷する前には、必ずノズルチェック・パターン印刷をする習慣を付けましょう。
時々快調に印刷して終わった次の日に、
カラーバランスの崩れに驚くことがありました。
この原因は何にせよインク通路がエアによって絶たれるからです。
1. 何らかの原因で、カートリッジの排出口とヘッドの吸引ノズルとの間に隙間が生じ、
ここの密閉度が落ちると、ヘッドに詰まっていたインクは下に落ちます。
その結果、少々のヘッドクリーニングを繰り返すだけでは改善しない
重度インク切れ障害を起こすでしょう。
2.カートリッジの中のエア抜きが不十分であるとき、しばらく正常に印刷できても
一色がなくなるので、突然カラーバランスが崩れます。
☆
こうなったときの処置は、
少量のインクを1cmぐらいのゴムチューブを付けた注射器に入れて、
ヘッドのインク吸入ノズルに取り付け
ヘッドのインク通路全体にインクを充填します。
これと併せて、カートリッジの方もインク排出口からインクを吸引して
タンクに戻す作業を2,3回繰り返すことで楽に回復します。
念のためにヘッドクリーニングを1、2回繰り返せば復活です。
☆
カートリッジのインク排出口のゴムリングは
古くなったら交換する必要があるかも知れません。
このゴムリングは注射器を差し込んだときに抜けることがあります。
ここの密閉度は重要ですから、「連続供給システム」を作るときに
接着剤の適当な物で補強すると良いかなと思いました。
普通は、薄い透明なシール(一度使用すると破れるが、周辺に付いている)
があれば、ゴムリングは抜けないと思いますが、ときどき剥がれてなくなってしまいます。
こういうカートリッジについては気を付ける必要があります。
注射器を差し込みエア抜きをするようなときは、ぐるぐるとねじりながら抜きます。
そのまままっすぐ抜いてはいけません。
6月6日深夜
警告!
現在、水で薄めたことが原因かどうかわかりませんが
イエローインクに黴が発生しました。
この黴は、胞子の大きさはインクフィルターを通過し、ヘッドのミクロンホールも通過しますが
菌糸状のコロニーはヘッドノズルを詰まらせます。
☆
ただし、カクテルは問題ありませんし、
イエロー以外の水割りでは黴の発生はありません。
真実が明らかになるまでは軽々に判断できませんが、
イエローの水割りだけは中止して下さい。
もし、イエローの出が悪くなり始めたら危険信号です。
この場合は、黴の発生したインクは廃棄処分して、
カートリッジもヘッドも繰り返し洗浄します。
【方法】
中性洗剤を入れたお湯をつくり、
注射器の先に1cmぐらいのゴムチューブを付けたもので
ヘッドのインク吸入ノズルに取り付けて押し込みます。
あるいは吸い出します。
これを何度も繰り返した後に
新鮮なイエローインクを押し込んで終了。
インクを、この方法で入れられない場合
そのインク自体も怪しいことになります。
(2003年9月28日)
【 水割り・カクテル法での印刷サンプル 】
3枚とも「連続供給システム」+水割り・カクテル法で印刷したものを
DiMAGE7i+プアマンズ・ツインストロボで撮り直しました。
パソコン画面と比べても、全く同じカラーバランスです。
いい加減な分量でブレンドしたものが、こんな綺麗な印刷結果をもたらすなんて
私自身も、驚異で信じられません。
周辺をトリミングしてしまいましたが、本当にこれは印画紙を撮ったものです。
デジカメ写真館の方に載せた、おなじみ小田原の桜祭りでの印刷サンプルです。
地鶏そばの写真は凄くリアルで、箸を突っ込みたくなります。
提灯のピンク色と水色も純度が高いですね。
これ2枚続きの印刷なので、ツインストロボの光源が左右に写り込んでいます。
結構悩み抜いたシャドー部の赤茶かぶりもすっかり解消し、綺麗な漆黒となりました。
ひとつ、付け加えておきますが、この印画紙はエプソン純正のPM写真紙です。
インクほどのコスト節約にならないので、
ここ一番の印刷では
紙はエプソン純正を使うことをお薦めします。
仕上がりの光沢度が違います。
どこよりもピカピカで硬質です。
☆
「連続供給システム」の印刷サンプル写真です。
(注:この写真は上記【水割り・カクテル法】での結果ではありません。
記述が遡り、プリンタ・ドライバだけでカラーバランスを取っていた初期の記事です。)
1 ライトシアンとシアン、ライトマゼンタとマゼンタの関係ですが、
微妙に成分は違います。
色もシアンを水で薄めただけではなく
シアンが群青色だとするとライトシアンは明るい空色で、シアンを水で薄めると水色です。
言葉の違いだけではないかと怒られそうですが、ニュアンスが違います。
同様にライトマゼンタもマゼンタと微妙に色味が違いまして
純正カートリッジしか見ていないとわからないと思いますが、
ポリタンクに詰めたものを傾けて垂直に戻してみると、
タンク壁をその表面張力で戻っていく速さはシアンとマゼンタは速くライト系は遅いです。
このことが詰め替えでは界面活性剤が入っているのではないかと疑うくらい、
いつまでも気泡が抜けない原因となっております。
2 インクの基本は水です。
グリセリンを入れる理由があるとするならば、
急速な乾燥を押さえインクヘッドノズルが詰まることを防ぐことが目的です。
グリセリンを入れると完全乾燥が遅くなります。
いつまでも湿度を保っている必要がある部分にグリセリンは使います。
正にヘッド部分がそこにあたります。
水だけではミクロのサイズのプリンタヘッドノズルでインクが乾燥したときに堅くなり過ぎて、
しばらく使用しなかった後のヘッドクリーニングに時間とインクがかかりすぎるからです。
3 イソプロピルアルコール
(ちなみにイソプロパノールが化学的に正式呼称:
国際純正化学連合1960年に制定。アメリカ、日本など主要国の教科書は
アルコールなどはメタノール、エタノール、プロパノールとなっている。)
などの有機溶剤を入れることの理由があるとするならば、
色素分子の水中での分散をよくするのが目的でして、
RCペーパーなどに吹き付けた後ではコーティング剤とのなじみが良すぎて広がります。
つまり、ドットが大きくなり解像度が大幅に減少するので
、これを入れることは逆効果だと考えております。
大きく滲みますよ。
そのようなわけで、水で薄める「水割り」が原則です。
4 水道水は殺菌用の塩素濃度だけが問題でして、
クリーナーで漉したもの程度で充分でしょう。
ppm程度の微量にある塩素も、紙に吹き付けられて乾燥してゆく過程で、
すっかり飛びますから、全くの水道水だってかまわないと思います。
まあ、純水にこだわるならば薬局に行き、お金を払えばいいでしょう。
塩素はタンクの中でインクを薄くするではないかという心配は無用で、
薄くするために水を入れた訳です。
HPに宣言いたしましたように、
インク詰め替えや「連続供給システム」に挑戦されるようなチャレンジャーは、
インクの調合を自分やる責任と義務があります。権利は何もありませんが。
素材にこだわるも良し、こだわらず結果オーライを楽しむも良しです。
あくまでも趣味ですからね。好きなように、薄めて下さい。
もしかするとジョニ黒いれたら良いかもね。焼酎はどうでしょう。
まあ、冗談はともかく、インクに鼻を近づけても、さっぱりそれらしい匂いはしません。
水道水で良いと思います。
結果は、上に掲載した写真の通りです。
私のモットー結果オーライです。
5月7日