ダイオード・ペア電源
なくなった電池の自動リカバリ機能
はじめに
5本直列電源は全く問題がなく有効で、お勧めですが、その回路特性上、唯一改良の余地がありました。
1本でも容量の小さな電池が混じっていた場合、直列であるためにそのダメ電池が原因で、ふたたびすぐ切れてしまう。
ダメ電池は何本もなく、経験上多くの場合1本である。そこで、この1本を迂回する回路があれば良いと考え、次なる回路を考案した。
1.ダイオードペア・5本直列電源
この回路は並列にしたダイオードを、なんらかの原因でブレイクダウンした電池の
自動リカバリとして使う方式である。いわば、バイパス・ダイオード。
注)図では電池は6本直列になっているが
初めは使用済み電池5本である。勘違いしないように。
ケースの関係で、電池を6本までとりあえず直列に出来るという意味で6本書いてある。
解説
バイパス用のダイオードはこれに平行に入る。電池に一つずつダイオードがペアとなる。だから、ダイオードペア。
5本直列なので電圧は十分だから、いやでもカメラに使われて切れた電池は、逆さになっても鼻血のでないほど空っぽになる。
すると、1Vを切った電池は急激に内部抵抗が増大する。直列だから急激なリクエスト電流に対して対応できない。
他のメンバーに迷惑を掛けるぞ。どうすんだ!
☆
そこで、ここからがこの回路のミソというか醤油というか塩バターなのである。ダイオードがバイパスしてくれているので、
切れた電池は回路の主流から外れる。(ほんとは取った方がよい!)
ここに、更に使用済み電池を開いていたダイオードのところに追加すると〜っ、
復活するのである!
やったー!画期的ー!
というわけで、うまくいくかどうかは結果が決める。
私の直感が正しければ、電池の極性逆転現象が始まる前にバイパスがはじまる。
すなわち、電池の内部抵抗×電流値がVfを超えたときから、バイパスが始まる。
電池にはしたがって、極性逆転という恐ろしい出来事が起こらない。
ばんざい!
注)現在、ニッケル水素電池の過渡応答についての基礎研究をしております。
オシロスコープで見る限りは、過渡応答が出ております。
急激な負荷抵抗の減少で電流が急増したときの電池の両端電圧波形に時定数があります。
トランスを使用したAC電源(スイッチング電源も)では、1次コイルの磁界の変化に対する逆起電力による
2次コイルの電流によって所定の電圧を得ております。したがって、いわゆる光速で
電圧リカバリーが起こり、時定数はあるにしても小さいのではないか。
一方、化学変化に頼る電池の場合はイオンの動き(拡散)で起電力が発生します。これは、遅いのではないか。
すなわち、時定数は大きく、過渡応答として動的な内部抵抗の値は桁違いに大きいと考えます。
すると、どういうことになるでしょう。
一瞬だとしてもダイオードの導通条件が成立し、バイパスが起こります。
☆
静的な電流の考察からはダイオードに電流が流れる条件は、そこに並列に入っている電池がVfだけ逆電位になることです。
この話は、文字どおり電池の極性反転です。
別なページで述べているCanon PowerShotPro90ISのニッケル水素電池6本直列電源で、
1本の電池だけ0.2Vを示した減少がこれの前兆でしょう。不思議なのは、それでも、カメラは動いていたことです。
電池の内部抵抗はひと筋縄では行きそうにありません。
注)後の水の電気分解実験とそこからの考察で、
転極の危険も水素吸蔵金属の酸化による劣化の畏れもないことが判明しました。
☆
ともかく、やってみます。
ショットキーバリア・ダイオードを各電池に並列に入れた。
(日本インター 整流用ショットキーバリアダイオード11EQS10:10本1組360円×2)
ダイオードを2つ更にペアにしているのは、購入した物が電流容量は十分だが
2つ並列にして内部抵抗をさげるため。1本だとダメです。
(後述の理由によりダイオードの並列使用は有効です。)
左の黒いのはN様のアイデアによるコンデンサ4700μFです。
コンデンサーを追加することで、起動可能となった事実があります。
(これが、時定数を下げるのかどうか非常に興味が出てきました。)
よって、今回は必需品です。N様に心から御礼を申し上げます。
(N様のは銀極板でさらにゴージャス。)
完成した物を使って実際に撮った写真
電圧をモニターしながら、かつプアマンズ・ツインストロボ・タイプTで撮影。
5Vですね。そして、直列6本目にはまだ電池は入っていません。
5本直列の状態に、更に、ショットキーバリアダイオードが直列に入っていることに注意。
カメラはダイオードからの出力で動いているのです。意味を考えてください。
この段階で、どれか1本切れてから、6本目の電池を追加します。
写真でおわかりでしょうか5本目はアルカリ電池です。
1年前にDiMAGE7で使われた、まだまだ使える使用済み電池。(電圧1.48Vぐらい)
(これがビニール袋の中にいっぱい残っています。)
2.実験開始
従来の使用済み電池が5本の状態で、実験的に近所の被写体を撮ってきた。
大した景色はないのでプアマンズ・ツインストロボ・タイプXで
マクロ撮影ばかりやって、37枚で電池は切れた。
全部、ストロボ発光だから、普通の撮影では40〜60枚程度には撮れるはずだ。
ここで注意しなくてはならないのは、
プロトタイプの5本直列よりダイオードが直列になっている分、不利だと云うことである。
最後のダイオードの部分をショートさせておけばもっと撮れるだろう。
しかし、この改良版ダイオードペア電源は、1回目の電池切れてからが勝負。
ここからが、真骨頂である。
最終的には、フル充電した8本の電池を持っていき、
並列ペア4本電源で使いきり、
さらにダイオードペア電源で使いきる。
最終的に電池は絞りきられて1.0V。
放電器などはいらない。充電はすぐ始まる。エネルギーの無駄遣いなし。
地球に優しい電池の使い方である。
謝辞:FlowerEnperor様に敬意を込めて、ここに感謝の言葉を述べさせていただきます。
10月19日(土)昼
(10月25日改訂)
3.ダイオード・ペア電源オリジナル
フル充電されたニッケル水素電池を使い果たすべく6月30日に考案された次の回路は
ショットキーダイオードの閾電圧Vfの高さが予想に反して0.4V以上あって、内部抵抗が6Ω程度のデジタルカメラでは、
電池に直列にした部分の1Aに対する損失が0.4W(7%)と大きすぎ、DiMAGE7の電池の持ちを改良する目的には向かない。
ただ、こちらでは逆方向に電流は全然流れないので、極性反転も電極板の酸化も起こらない。
高電圧小電流の回路で威力を発揮する優れた回路である。
そこで、方針を変更して、5本直列電源の路線を発展させることにしたのが上の回路であった。
4.備考
私が手に入れたショットキーダイオードは予定より小ぶりの物だったようで、
価格コムの「おぎ」様よりの指摘と提供していただいた資料に依れば
以前見たデータより順方向の閾電圧値Vが25℃で、0.2Vより大きい0.4Vぐらいの物でした。
「おぎ」様、下記のように、お陰様で定量的な議論をすることが出来ました。
大変感謝申し上げます。有り難うございました。
これからもよろしくお願いします。
下図参照
日本インターの資料より抜粋
この結果、起動してスタンバイ時の電圧が5Vということになりましたが、
起動してしまえばこっちのもので、
DiMAGE7は4Vで動作可能であることはわかっておりますので、
内部抵抗さえ小さければ、その後はどれかがなくなるまで電圧降下は小さく、
多少のスレッショルド電圧の大きさは問題ありません。
肝心の内部抵抗ですが、2本並列にしたことにより1本の時より半分になっております。
さらに、大きなダイオードを使えば、内部抵抗はさらに小さくなるでしょう。
上の図を使って、ちょっと計算してみましょう。初め、電圧/電流=抵抗という簡単な考えかたで出してみます。
☆絶対値V/Iで抵抗を計算。
上図V−I曲線から計算される内部抵抗は
電流1Aで0.82V必要なので、0.82Ωです。
0.5Aの点を見ますと0.68V必要なので1.36Ω。
カメラが1Aの電流をリクエストしたとき、1本当たりは0.5Aなので抵抗が1.36Ωとなります。
が、並列なので半分の0.68Ωとなり
1A流れていて電圧は0.68Vの電圧降下と云うことになります。これが、1本だと0.82Vなのです。
ご指摘の、並列にしても電圧降下は一緒の筈ですが、というのは間違いです。
☆
結論的に申しますと、1Aのリクエストでの電圧降下はそれぞれ1本だと0.82V、2本で0.68V、3本で、0.67Vとなります。
ついで、1.5Aのリクエストが来ますと、電圧降下は1本で0.86V、2本で0.81V、3本で0.68Vとなります。単純に増加はしません。
☆微分抵抗凾u/凾hの話。
上のグラフは縦軸が対数目盛で見慣れない方にはわかりにくいかも知れませんが
我々に必要かつ重要な動的内部抵抗は電流値の増加分に対する電圧の増加分の比です:つまりV−I曲線の微係数(曲線の傾き)です。
これはグラフが小さくて見にくいのですが、1.3A付近でΔV/ΔI=0.08V/0.2A=0.4Ω、0.5A付近では0.18V/0.2A=0.9Ω位
0.2A付近では0.2/0.08=2.5Ωと電流が少なくなって来ると急激に大きくなります。そして、ついに
0.1A付近では0.02A増やすのに0.2Vかかりますから微分抵抗は10Ωとなります。
スイッチング素子
このように電流をゼロから増やしてくると、急にある電圧から電流が流れ始めるように見えます。
この電流が流れ始める電圧を閾値(スレッショルド電圧)、もしくは使用中に流れるように掛けておく必要があるという意味でバイアス電圧ともいいます。
これは出来ればゼロであることが理想です。
そして、流れ始めたらわずかな順方向電圧でものすごく流れて欲しいわけです。つまり、内部抵抗がきわめて小さいこと。
この特性は、一般的にスイッチング素子として求められる基本的な特性です。そういうわけでショットキー・バリア・ダイオードに目を付けたわけです。
さて、ニッケル水素電池の内部抵抗が加わって更に電圧降下が起こります。
ニッケル水素の内部抵抗はこれより一桁小さいぐらいですので、いずれにせよ、DiMAGE7シリーズの活動で起こる電圧降下は
0.9Vの範囲内に収まるでしょう。
ある意味、ちょうど電池1本分みたいなものですから、最初から6本でスタートしても良いぐらいです。
しかし、5本でスタートを切るのが王道です。
考察および今後の予定
どのみち、なくなった電池を交換しなければならないことです。それを、どうやって見つけるか?
もちろん、取り出してテスターで1本1本測ればわかるのですが面倒です。一つアイデアがあります。
次は、もっと抜本的な解決へ向けてただいま新案を具体化しようとしております。乞うご期待!
つぶやき
しかし、人間ってやつは急には進歩しないもんだ。
アイデア小出しで済みません。
10月21日
消耗電池の内部抵抗について
起電力の切れた電池は内部抵抗が著しく大きくなっております。
この段階からダイオードが働くと考えておりますが、それまではダイオードには電流が流れません。
この点をもう少し詳しく調べておく必要性に迫られております。
すなわち、ダイオードに電流が流れるためには電池の残留起電力が少しでも残っておりますと、静的な考察では電流は流れません。
しかし、実際にはパルス状のリクエスト電流による過渡応答で、静的な話ではないはずです。
そして、このリクエスト電流が急激に大きくなったときの過渡応答により、電池の内部抵抗が極限まで大きくなるのか、それとも、極性反転が起こって
マイナス起電力(これが判りません)になり、ダイオードのVfを超えるのか、実は判っておりません。
すべては、結果オーライで使っていることをお断りしなければいけないことを明記しておきます。
なにぶんにも何が起こるか判らない化学変化による起電力です。
私自身で何とか調べてみますが、それまでにどなたか判る方がいらっしゃっいましたら、教えてください。
10月24日
その後の検討結果から光明が見えてきました。はっきりしましたら発表します。
−0.4V程度では、ニッケル水素電池に極性反転は起こらないのではないか?です。
10月29日
5.新型5本直列電源の成功を受けて
リボルバー電源の考案
この方式を6本直列電源に応用します。
すると、電池の配列はプラスマイナスが交互に並ぶようになります。
電極を固定して、電池を2つ分回転すると同じ配列になります。ここに、次のアイデアが眠っているわけです。
切り替えスイッチを出力コードにつけますと、1本だけ常に浮いていますから、一つ回転するたびに極性を反転すれば
手動ですがダメ電池を摘出できます。
ひとまずアイデアだけ発表しておきますが、実現はその気になればすぐです。
というか、もうやりかけております。
その気になったら完成報告をいたします。
あまりに転回が速すぎて、私自身追いつきません。
まずは出来たばかりの新型5本直列電源の試用レポートが先です。
申し訳ありませんが、リボルバー電源の報告は気まぐれにいたします。
風任せ〜♪
10月27日深夜というか早朝?
☆
6.水の電気分解実験
ニッケル水素電池は正極に水酸化ニッケル、陰極に水素吸蔵金属(ランタン・6ニッケル合金など)、
電解液に6Nの水酸化カリウムで構成された2次電池(充電可能)である。