小惑星衝突で動くのは地殻とマントルの固体部分だけ
2019.10.8 平井則行
前回の私の報告の後、最近、次のような事実が判明しました。現在の地球の固体部分、内核の自転が微妙にその外側の地殻マントル部分より速いということです。これは、非常に重要な事柄を示唆します。つまり、内核は金属の固体ですが、その外側が液体の金属でできた外核で、いまから約6500万年前の白亜紀末期にユカタン半島に落下した天体が地球にもたらした衝撃により、大きく自転速度を変えたのは地表面を含む、コアより外側の固体部分だけだったということです。この、固体部分は溶けた金属の外核に浮かんでいるスラグ部分です。液体である外核部分は浮いている地殻やマントルが急激な動きに追随しません。小惑星が落下しても、影響を受けるのは表面部分だけなのです。このことを考慮して、プログラムを変更し計算してみましたら重大な結果が出てきました。地球の自転が逆転する可能性があります。

 もし、他の天体の衝突で、地球の自転が逆転すると、どういうことが起こるかというと、中心部では依然として今までの自転速度で回り続けるので、逆転している地殻マントルが、そのコアとの粘性抵抗により、元の方向へと引きずられて戻り始めます。当然、その途中で自転速度は一端ゼロになります。これは、大変なことです。太陽に向いた昼の半球は気温や海面温度がどんどんあがり、その部分の生命は死に絶えます。反面、夜の部分は凍結が始まり、これも、生物大絶滅が起こるでしょう。問題は、自転が止まっている時間がどれくらいの長さかということです。これが短ければ、なんとか大災害は最小限に抑えられ、なんとかなります。自転が停止しても、かろうじて生命維持が可能なのは、昼と夜の境目、朝と夕方の極狭い地域に限られますが、気象現象はいちじるしく混乱し、やはり、植物や動物は長くは生きられません。この自転がゼロになる期間の長短を決めるのは、地殻マントルと外核の境界面での摩擦抵抗の大きさに他なりません。いずれにしても、長い年月の末には、地殻マントルの自転は、地球の角運動量の大半を占めるコアの部分の自転に引き戻されて、元の方向に回転し初め、やがて、ほぼ一致した方向と速さで、自転が落ち着きます。その、年月が6500万年だったと言うことでしょう。この解釈以外に、現在、内核の自転速度が、微妙に速いことを説明づけるストーリーはありません。なぜならば、コアを動かす方法は天体衝突だけだからです。次の画像を見てください。これは、改良されたプログラムを走らせた様子です。

プログラムの新しい部分は右下の部分です。

 コアが一緒に廻らないというチェックを入れると、現在の角運動量値が小さくなります。重いコアの部分を除くので地球の慣性モーメントが8割程度になってしまいます。これと、小惑星の持つ角運動量とを比べてみると、地球の現在の値を超えてきます。 ただし、この天体の大きさを現在恐竜が滅んだ原因とされる、ユカタン半島へ落ちたものの2倍の直径に設定してあります。というのは、もしかすると、あのとき落ちた天体は一つではなかった可能性もあるからです。そして、落ちた場所が太平洋だったら、痕跡は残せないか発見できませんから。こうして、自転は逆転するのです。

 ここで、順行と逆行の但し書きの意味は、天体が夜側と昼側のどちらに衝突するかであり、全く逆の結果をもたらすという意味です。
 最大の角運動量変化は接線方向に近い角度で落ちる場合ですが、完全に接線方向ですと、かすめるだけになって、ふたたび宇宙空間に飛んで行ってしまいまので、少しばかり深い角度で落下して、まともに運動量を受け止めたと仮定して計算しています。
 自転周期の計算は現在の24時間を基準に、落下前と落下後の角運動量の比で計算さしています。このように計算すると、絶対計算のさまざまな単純化モデルの誤差が打ち消し合い消えるので、良い方法です。

 この新しいプログラムはHPのホストに入れ替えてありますので、再度ダウンロードすれば得られます。ZIPファイルも同様です。ぜひダウンロードして動かしてみてください。

 このプログラムを作るきっかけは、島田荘司氏の「アルカトラズ幻想」という推理小説の中に出てくる「恐竜の絶滅の理由」が「天体落下による自転にお遠心力の急な減少」でしたが、その理由の真実は自転の逆転と、それに続く停止だった可能性が出てきました。停止している期間が1ヶ月程度でも大打撃です。1年も続けば、ほとんどの地上及び海中の生物は大絶滅となるでしょう。しかし、現実には、恐竜以外の小さな生物が生き残ったわけですから、巨体生物だけが滅んだシナリオを考えなければなりません。しかし、さほど無理なことをいわずとも説明できそうです。恐竜のような大きな生き物が身を隠す場所はなかったというだけで十分でしょう。小さな生物は、地下の洞窟や海の底に逃げ込めば良いからです。ただし、それも、朝夕の部分のリング状の地域にいた固体に限られますが。
 
 遠心力は、やはり、さほど大きな変化はしないかも知れません。その点では当てが外れましたが、自転の停止期間があるというのは盲点でした。これは、十分恐竜の絶滅の理由になり得ます。

 今後、やるべき事柄は、もう少し精密な議論と計算、そして、天体落下の痕跡の探索です。自転軸の変化も考える必要があります。夏と冬の気温差が大きくなる可能性もあったからです。中生代までは自転軸が公転軸と同じで、傾いて折らず、季節がなかった可能性があります。それを考えるだけでも、生物にとって、大きなパラダイムシフトを起こします。ほ乳類が有利になるからです。

重要

ケーブルテレビJCOMのディスカバリーチャンネルで金星の謎についてやっていました。
私の作ったプログラムでは、小惑星などが地球のような天体に衝突すると自転が止まることがあるという結果が出てきます。惑星の自転が止まると云うことは核の回転もとまり、地磁気も生まれないと云うことなのです。これは生物界に致命的な結果をもたらします。太陽からの高速荷電粒子などが地表に降り注ぐからです。また、自転が停まると何時までも昼の側と夜の側が生まれるということで。これが何を意味するかは想像力の問題です。

 地球の場合は、恐竜が絶滅するような小惑星落下が起こっても、既に金属コアが大きく成長していて、外コアは高温のために液体となっています。自転が一時的に止まってもコアが回り続け、地磁気は維持されます。そして、自転もコアとマントルの間の粘性抵抗により、核の回転に引きずられ、マントルと地殻の自転も復活します。しかし、金星ではこのコアが成長する前に小惑星衝突が起こり、全体の自転がほとんど消失してしまい、したがって地磁気が消え、海中の石灰層が死滅するか、そもそも誕生していないので火山活動による二酸化炭素やメタンは大気中に蓄積し続けます。その結果は温室効果暴走というカタストロフィーをもたらします。当然、温度上昇で大気中には水蒸気も増え、温室効果に拍車をかけます。この水蒸気増加はキーワードです。
 現在の解釈では金星の地磁気がなかったので温室効果の暴発が起こったというシナリオまでは出来ていますが、天体衝突で金星の自転が止まったと云うことまでは至っていません。金星の近くマントルコアという分離が進むより早い段階で天体が金星の自転を止めてしまったのだとすれば、守備一貫した説明が出来ます。コアの金属がまだ熔けずに個体だった場合は、自転が止まるとコアも停まり地磁気は生まれないからです。おまけに、地磁気が生まれなくとも、自転が停まるだけで太陽に向いた面の気温上昇だけでも水蒸気は惑星全体を覆い、温暖化の暴走が始まります。いずれにしても、自転が停まることは非常に重大な事件なのです。

 おまけ:現時点での危惧
 地球の場合に限っても、温室効果がある臨界値を超えると、海水面からの水の蒸発が増え、温室効果がさらに起こり、正のフィードバックとなって一気に気温が上昇し、停まらないという結論になります。温室効果の暴走です。私は密かにこれを恐れるのです。

最新の情報
2022年の1月にNASAから、最近地球の自転が15ミリ秒ほど早くなったという謎の観測データが発表されました。地球の自転が「去年から突然速くなった」と判明! 1日24時間以下に… 原因不明、世界規模の大トラブルも!?ートカナ (tocana.jp)

最速だったのは2020年の7月19日だそうです。以下、私のFaceBookから抜粋します。

Fb抜粋

地球の自転が少し速くなったという記事を複数、見つけました。
といっても、1.5m秒とかのレベルで普段の生活では気がつかない程度なのですが、科学的には由々しき事態です。
 というのは、自転速度は潮汐により少しずつ遅くなるというのが従来の常識でした。やがて、だんだん、1日が24時間から25時間と長くなっていくのです。2億年ぐらい前、恐竜がいた頃の1日は18時間ぐらいだったという推測があります。遠心力で恐竜の体重が軽くなっていたので、巨体を維持しやすく、翼竜も空を飛べたという話、推理作家の島田庄司氏の推論ですが、これを私はプログラミングし、追認しましたね。ユカタン半島に落ちた彗星が自転速度に対して負の働きをして、自転が急に遅くなり、地軸の傾きも変わり、四季が生まれ、気候の変化と体重の増加で恐竜が絶滅したというストーリーでした。
 それが、最近、突然、2022年の6月、7月と何度か測定するたびに速くなっているのだそうです。自転が速くなる原因は、その他、地殻変動(地震や断層のずれ)、地球内部の液体金属コアの対流などが考えられるそうですが、いまのところ、原因不明だそうです。
 ですが、私は、え!やばい!と思いました。
 何がやばい!かというと、地球温暖化で氷河が溶けると、溶けた水が地球の中心部に近づくということです。つまり、海に流れ落ちるのです。すると、角運動量保存則により、ちょうどフィギアの選手が回転ジャンプやスピンをするときに手足を体の中心軸に近づけると回転が速くなるように、地球の自転速度が上がります。これで、どれくらいスピンが速くなるかを計算してみようと思いましたが、未知数が二つで、角運動量保存則という方程式が1つしかありません。溶けた氷の質量と落差の値を二つ決めなければなりませんし、おまけに、どこの氷かを決めなければなりません。後期高齢者にもうすぐなる私には荷が重いです。そして、計算が出来たとしても、それがどうした、といわれそうです。
 あ、今もうひとつ思いつきました。地球内部のコアは5100kmの深さから超高圧のため固体になりますが、2900kmとこの5100kmの間は融けたニッケルと鉄の合金なのです。この液体金属があるため、恐竜を滅ぼした彗星落下でマントルの回転速度が遅くなって、恐竜の体重が増え、絶滅したとしても、瞬間的には液体コアと固体コアは以前の回転を維持しているのです。マントルはコアの上で滑りますからね。
 やがて、コアの粘性抵抗が原因で、マントルを少しずつ回し、コアとマントルの回転速度は近づきます。確かに、コアの回転速度は、現在、わずかに地殻・マントルより速いのです。
 コアとマントルの間の温度が冷えると、つまり、コアの粘性が高まると、コアとマントルの間の癒着が少しずつ深いところまで進み地表面も速く回る、すなわち、1日が短くなるというわけです。こちらは、特にやばい話ではないですね。さあ、どちらが原因でしょう。興味深く、心配であることには違いありません。

マントルより速く回っている地球の核(液体金属)の回転が粘性抵抗の変化でマントルや地殻の回転を速めることや、地殻の沈み込みと同時に起こる正反対の現象、サーマル・プリュームが原因で、核の角運動量がマントルに移ることが原因と考えられますが、一番やばいのは、地球温暖化で地表の氷(氷河)が融けて重心に近づく結果、ちょうどフィギュアスケート選手がジャンプ時の回転を速めるために、体の中心軸に腕などを巻き付けてスピン速度を速めることと同じ原理で、自転速度が上がっていることが原因だとすると、温暖化の影響ということになり、環境的には非常に憂うべき事態だということです。

まだ、正式の結論は出ていないのですが、私は、もうひとつの原因を考えました。それは、天体落下による自転速度の変化です。まさしく、ここで議論していることで、プログラムを見直し、小さな入力値でどれくらいの変化が出るのか調べてみました。すると、計算では、火球の落下の落下程度で15ミリ秒ほどの変化が得られました。



以下、プログラムのダウンロードリンクを張ろうとしましたが、上手くいきません。W11に拒否されているようです。
ZIPファイルはダウンロード可能で、こちらjitenzero.zip
をリクエストして下さい。


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