なちよ丸物語
 なちよ丸はかわいそうな猫です。
兄弟たちより小さく、ハンディをしょっていました。
発見したとき、左目を負傷し、風邪を引いていて、合併症で目やにと鼻がかさぶたのように堅く固まり顔左半分を覆っていました。
がりがりにやせ、お腹がすいているのに、鼻が効かないのか、餌をまいても食べられません。兄弟たちが餌に駆け寄るので、自分も一緒に駆け寄るのですが、餌が解らず途方に暮れています。この様子は、見ていてとてもかわいそうでした。
 野良猫には、時々ですが餌をまきに行きます。そのたびに、同じことが続きました。3度目に、私は保護する決心をしました。このままでは死んでしまいます。
鼻の周りにこびりついたかさぶたのようなものは、はがすと血が出てきます。仕方がないので水で溶かして、根気よく拭き取り、傷薬を塗りました。
左の写真が、保護した直後のものですが、ひどい顔です。左目もろくに開いていません。猫用の目薬を指しても治りが悪く、私は人間用の抗生物質を体重に比例した量削って与えました。これは歯医者でもらった抗生物質で、余ったものをとってあったのです。
 体が小さいので、カプセルから出した抗生物質をカッターで削り、ほんのひとかけらです。人間の体重比で人カプセルの1/60以下でしょう。これが、結局一番効いて、風邪も傷も目も治ってきました。
上の写真は、保護した直後の写真です。初め乾燥餌をあげてみたのですが、やはり食べないので、次に牛乳に浸し柔らかくしてあげました。猫のおっぱいは牛乳より脂肪分が少なく甘いらしいので蜂蜜もちょっぴり入れてやりました。猫用の粉ミルクもあるのですが、瀕死の野良猫のなちお丸には、だめもとです。それでも、元気がなく独りで食べられませんので、スプーンで口の中に入れてやりました。

風邪を引いていたので、タオルを巻き、ソファーの上に寝かしました。小さななちよ丸は長さ15cmぐらいしかありません。人間の風邪薬もあげました。刺激が強かったのでしょう、これは抗生物質よりいやがりました。
 
 目の傷は先天性なのか誰かにいじめられて引っかかれて出来たのか解りませんが、白目のところにピンク色の潰瘍が出来ており、まつげが逆まつげになってその角膜に入っています。それで、目やにが出っぱなしになるようでしたので、涙でひっついている睫毛をはさみで切り、角膜から引き離しました。左目をなめるために使った右手が一部毛が抜け皮膚が溶けて血が出ているほど目の症状はひどいものでした。とにかく、この猫はいっぱい生まれた不幸な野良猫として、間引きされ、もうすぐ死ぬ運命だったのです。

 最初は5粒ぐらいしか乾燥餌のミルク浸しが食べられませんでしたが、徐々に回復し、餌が口に入って来た分、だんだん元気になりました。完全に独りで餌を食べ元気になるのに2ヶ月ぐらいかかったように記憶しています。保護したのが10月でしたからほとんど年の暮れです。暮れに東京にサイクリングに行ったとき、独りで食べるようにと、ミルクふかし餌を置いておいたのに、帰ってきたとき食べていなかったのを記憶していますから、完全な回復にはもっと月日が掛かったかもしれません。
左の写真は外出をさせ始めた頃の写真です。

 下の写真は保護した場所に連れて行ったときのもので、ごらんのように兄弟たちより大きくなっています。逆に言えば、野良猫というのはこれくらい餌にありつけず、大変な日々を送っていると言うことです。

 かわいそうなんですが、すべての野良猫を助けるわけにはいきません。一番不幸だった猫が幸福になった訳です。
また、なちよ丸は今まで飼った猫の中で一番可愛く美形になりましたが、愛情を注げばどんな猫もこのように可愛くなります。その反面、過酷な野良猫生活を続けていれば、表情は険しく、かわいげのある顔にはなりません。野良猫が可愛くなく、にらんだような目つきになるのは日々の暮らしのせいです。(人間も同じですね。)
回復途上のなちお丸。
このベッドは1月いっぱいまでで小さくなってしまいましたので、ハナコが使っていた紅いイチゴのデザインの猫ハウスを洗濯して、同じ場所(リクライニングシートの背もたれの上)で寝かせました。
 まだ目が直っていません。でも、瀕死の状態から世話をしている私を見る目は、この世で一番信頼できるのはアンタだよと言っています。
イチゴハウスの中のなちお丸

 この状態はリクライニング椅子の背もたれの上に板をのせ、片方をオーディオラックに乗せて固定した状態です。ここの場所が一番安心して眠れるようでした。私が音楽を聴いているときすぐ近くに私の頭が見える壱です。まあ、猫は高いところが好きだということもあります。
快方に向かうなちお丸