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5本並列放電器
もっともシンプルな放電器のかたち

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市販の放電器はMOS−FETなどを用いて定電流回路で放電器を構成するため、
並列ではFETの動作電圧より低くて定電流回路が作動しないため、直列方式をとっている。
電圧に関係なく単位時間当たりに流れる電気量が電流である。
直列方式では電流値が共通なので、全ての電池が同じ電気量を放出する。
したがって、当然ばらつきのある電池は、終了時に各電池の電圧がそろわない。
結局これがのちに充電終了時の電圧、すなわち電池の充電量に再びばらつきをもたらす。

シリコンダイオードの順方向閾電圧を残して放電がとまるアイデアは既に巷では知られているものであり、
ダイオード1個と抵抗の組み合わせや、ダイオード2個直列のものとがある。
ニッケル水素電池の使い切り終了時電圧は1.0Vであるから、後者のものが適当である。
というわけで、新型5本直列電源と同型のネジ締め付け方式で、こちらは5本並列放電器を作成した。
これにより、常に5本の電池がそろって充電され、そろって終了を迎える理想の姿となる。
いままで、発生がやむを得ないものとあきらめていた「ダメ電池}の発生が防止できる。
製作は非常に簡単なので下の完成写真だけを掲載する。
(現在はダイオードを別なものに変えてある。1月20日))
HODEN_ALL.JPG - 41,660BYTES
現在電池は一つだけ実験的に放電しているが、試しにまだ元気な
1.28Vの電池をかけたらダイオードを流れる電流は0.76Aぐらいであった。
すると直列2段のシリコン・ダイオードの等価抵抗値は1.628Ωとすると、
ニッケル水素の内部抵抗が0.056Ωだから、此の状態で1.684Ωということ。
(有効数字を知らないわけではないが、つじつま合わせなので細かく表示している)
電圧が等しく5本並列になったニッケル水素の抵抗値は0.011Ωな訳で全部で1.639Ω
すると、5本に増えても流れる電流値はさほど増えない。
5本並列では0.78A流れることになるから、ダイオードの放熱は必要ない。
0.9996【W】か。毎秒約0.239カロリー発生。
(実際は、5本直列使用後の電池なので、1.16Vぐらい以下で、
電流値ももっと少なく大丈夫かな。熱対策は必要なさそうです。)
シリコンダイオードのスレッショルト電圧(閾値電圧)×2の電圧まで放電する。
試作器では1.2Vぐらいから始めて一時間ほどで1.14Vとなった。
もう少し下げた方が良いかもしれない。
(12時間放って置いたら1.12Vになっていた)
使用するダイオードの組み合わせを変えると、多少終了電圧を選べる。
たとえば、シリコンとショットキーを組み合わせるとちょうど1.0Vくらいになるが、
放電器といえども、電池をスッカラカンにするのが目的ではなく、
電圧(電気量)を揃えたいのだから、これで良しとする。
また、完全に空にすると、電池の使用説明注意書きに書いてあったように、
新しい電池や、使わずに放って置いた電池と同じ状態となり、
2,3度充電を繰り返さないと、元の状態に戻らなくなる。(後述)

放電で、もっとも気を付けなければいけないことは過放電である。
真の過放電とは端子電圧をゼロになるまで放電することを云う。これは危険だ。
それ以上の逆電圧で電流を流すと水素吸蔵金属が酸化して、永久的に劣化する。
電池会社は、多少の余裕をもたせていて、陰極を余分に充電して酸化されないようにしているから、
少しぐらい逆電流を流してもすぐダメになるということではない。

この、電池の逆電圧負荷の状況は直列に放電しているときに起こる。
直列の場合、先に電気のなくなった電池は回路の中でもっとも抵抗値の大きなデバイスとなる。
閉回路では、これはなくなった電池のマイナス極に他の電池のプラスがかかり、
他の元気な電池がよってたかってダメ電池を逆充電する形になるからである。
これが起こる開始電圧はダメ電池の中での水の電気分解の開始電圧である。
だから、4本以上の直列電源では差し引き、逆圧が3V以上あるから危ない。
(水の電気分解の理論開始電圧は1.23Vであるが、実際は白金触媒電極で2Vぐらい)
しかし、デジカメではパルス変動の下限が4Vを切ると、
電源をオフにしてしまうため、6本直列電源以上で問題となってくる。
このことからも、5本直列電源がリーズナブルである。

電池のリフレッシュについて

放電器で残った電気を捨てる行為は好きではない。メモリ効果は信じてはいない。
じっさい、経験したことはない。そういわれているから、そういうものがあると思っているだけかもしれない。
現に、電池会社はメモリ効果を認知していない。
ニッケル水素電池の構造上、放電中は、水素吸蔵金属の奥の方に入った水素原子が
アルカリ電解液側(陽極側)に出てきていて、陰極表面にぎっしり詰まった状態であるとしよう。
このとき、かりに奥には水素は空っぽとする。
ここで、充電しようとすると、電極表面は飽和状態を呈する。
で、瓶のクチ効果で水素の放出効率が落ちて電圧が下がり、充電器は終了してしまう。
これが、私の理解しているメモリ効果の筋書きである。
だが、そうなのか。
充電電界がかかっても陰極表面の水素はイオンではないから、たしかに奥に引っ込んでくれないが、
継時的に拡散によって奥へ順次移動するのではないのか。
すくなくとも使い切ってから充分時間のたった電池はそうなっていないものか。
メモリ効果は、放電直後に充電したときに起こるのではないだろうか。
このことが正しい推論だとすると、普通はメモリ効果は起きないと思う。
だれも、そんな充電はしていないからだ。
ひるがえって、空っぽの電池を充電するときには、
拡散が間に合わず表面で飽和して充電が速く終わり、
すぐ切れるということになるのではないのか。
これは、新しい電池に特有の現象で良く知られたことである。
だとすると、リフレッシュは愚行である。奥の方まで空っぽにする行為だからだ。

追い充電すると良くないというのは過充電になるからだろうが、このときは−ΔVの特性はパスなのか。
使い切らないうちに充電するのがどうして悪いのか、明確な話ではない。
パルス充電方式で揺さぶりをかけながら充電するとかなり入るのだから、要はやはり、水素イオンなどの拡散問題である。
充電終了時に電圧が下がるデルタヴイのメカニズムはそういうわけで、たぶん、瓶のクチ効果である。
だとすると、追い充電で過充電になるとしたら、なぜそのとき−ΔVとなって終了しないのか。
使い切らないうちに充電するのも追い充電ではないのか。
(実際、ほとんどの場合がこれである)
いまいち、なにが理想の充電なのか、まったくわからない。

4本の内蔵電池方式では、1.25Vぐらいで終了するから、つねに放電不十分である。
このまま充電してなぜ、いけないのかが大問題。5本直列は、この問題をさわらずにクリアした。

結局、もうひとつの疑問は依然として残る。
充電方法がまずいのではないか。
充電器は直列のものもあるが、
通常の製品は1本1本充電するタイプのものであるから
うまく充電すれば、そして時間をたっぷりかければ、
全部が充電し終わったときには、奥の方までたっぷり水素が入るだろう。
これだ!瓶にコーヒーとか砂糖を詰める要領と同じと思えばよい。
ちょっと入れてはトントンたたき、低くなったところへまた詰める。
充電器で云えば、1回くらい−ΔVになったからといって充電をやめるんじゃない!
しばらく時間をおいて、温泉に浸かるがごとく高温で養生し、また充電する。
これを繰り返して、−ΔVになる時間の間隔が数秒となったら、
ほんとうにもういっぱいなのだから終了。これだ!

−ΔVを検出しているICはPICといって、
所定の動作をするように人間がプログラムしたICである。
その人間が1回検出したら「充電やーめた」とプログラムしているわけだから
どーにもならない。
そのうち、「時間はかかるけれど、完全にいっぱいにしてあげます」という充電器が登場するだろう。
あきらかに、もののわかったプログラマが作ったICによる、理想の充電器である。
今の人は気が短いから「1時間でなんとかせい!」というだろうが、無理だって。
相手は化学反応なんだよ。赤ちゃんが急に大人にならないのと同じ理由だよ。
現実の充電器は急速充電であるから、たぶん、妥協の産物なのだ。
フル充電は夢のまた夢かな。
1月13日未明


5本並列放電器なので、銅板電極は全部つながっているところが、5本直列電源の場合と違う。
HODEN_S.JPG - 57,033BYTES

製作上の留意点

銅板の中央穴はネジに接触しないように径12mmぐらいを開ける。
アルミより堅いのでリーマーで削るのは大変です。
電気ドリルで小さい穴から段階的に大きくしていくのが楽でしょう。
金属用のパテは15分硬化剤でしたが、慣れたので充分間に合います。
電池に綺麗にサランラップを巻くのがコツです。
あと、周りをスズランテープで数回縛ったあと、
ドライバのような丈夫な細い棒を通してねじると、
電池がきりきり纏め上げられて最小限の太さに仕上がります。
仕上がりはご覧のように非常にシャープな峰を形成できました。
金属用パテはおすすめです。

使用レポート

HPにアップロードしてから、実際に使ってみると
シリコン・ダイオード2本だと1.2Vぐらいの電池を放電するのに時間がかかりすぎて、
なかなか電圧が下がりませんでしたので、
1本だけ閾電圧が低いショットキー・バリアRK36(サンケン)にかえました。
もう1本はGP15というシリコンダイオードです。
したがって、直列の閾電圧はショットキーが0.2V位、シリコンが0.56Vで0.76Vぐらいですかね。
電池の電圧とこの電圧の差が実質初期値として流れる最大電流となります。
たとえば電池が1.24V(ふつうDiMAGE7iがもうないと判断した電池の残留電圧の平均値)だとすると、
1.24−0.76=0.48Vが閾電圧のダムからあふれる電流となりますから、
差が大きいほど初期放電電流が大きいことになります。
これに変えたら、ちょっと熱の発生量が限度を超えて、アチッチとなりそうでした。
2つともたぶん最大許容電流が2A程度の小さなダイオードなので、
放熱処置として、ダイオードの中間リード線に蓑虫クリップを2つかましました。
そんな程度で良いようです。
ところで、これで放っておくと最終的に全部の電池が0.76Vになります。
まあ、1.0Vと0.76Vの差は実はほとんど差がないと思います。
問題は、ここまで空っぽにすると、たしかにリフレッシュですね。
深呼吸を1回したようなものです。

電圧統一器

ダイオードがなくても並列接続をしただけで意味がある!
電気の残っている電池から、空っぽの電池へ電流が流れて均一化するからだ。
つまり北米カナダ国境の5大湖だ。ちょっと違うか。

 

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