まだ、塗装も剥がしておらず、ビブラミュートもネックもついています。(奥に新調したルーターと鑿が見えますね。)これは、その後全部はずされて、ヤスリでつるつるに磨き上げられました。ネックの表面が少し削られてへこみ、いわゆるスキャロップになっていることに気がつかれるでしょう。これは使い込んだギターでフレットが摺り合わせで低くなっているので、チョーキングしやすいように、フレットとフレットの間を削ってあるのです。現在、私のギターでは3台がこれになっています。スキャロップという技術は昔は職人の大変な労力を必要としましたが、電動工具のある現代ではいとも簡単にしかも正確に加工できます。ディスクグラインダーにフレキシブルなペンキ剥がしの時に使う研磨剤の塗り込まれたスポンジたわしのようなツールで、あっという間に完成します。これが施工されたフレットは指が弦の真横から当てられるので、いたずらにニッケル製のフレットに弦を強く押しつけることなくチョーキング出来て、以後、あまりフレットが減らなくなります。ですから、新品のうちからスキャロップをやるギタリストもいるくらいです。もともと、チョーキングの機会が多いロック・ギタリストがやり出した技術です。本物のモズライトが手に入らなかった昔に、モズライトはフレットが低いんだと勘違いして吹聴した知ったかぶりのマニアがいましたが、本当は使い古したモズライトが売りに出されている状態を見たのでしょう。使い古したギターは度重なるフレットの摺り合わせでフレットが低くなっています。ギターというのは毎日使うような熱心なプレイヤーでは、同じ箇所のフレットがスチール弦で削られて凹みが生じます。これがひどくなると、その上のフレットとの相対高度が低くなるために、弦が上のフレットにさわるようになり、ビビリ音が出始めます。それを解消するには全体のフレットを平らなヤスリで平らになるまで削らないといけません。当然その分全体が低くなります。これに合わせてブリッジも少し下げ、だんだん、弦が指板に近づいていきます。この状態をみて、モズライトはフレットも弦も低いんだと知ったかぶるマニアが出現するのです。本物のモズライトは中古でしか見たことがないからです。現在の流通しているオールドというのがそれです。新品のモズライトのフレットが初めっから低いわけないじゃありませんか。また、脱線しました。
取り外したネックの取り付け部分の拡大です。このようにネックの方が少し傾いて取り付けられますから、ボディ側は一定の深さで溝を掘っておけばいいのです。測りましたらちょうど3cmの深さでした。ですから、この深さまで掘れるストレート・ビットがあれば事足ります。
2016年秋 
 これは、昔、職場でベンチャーズ。バンドを組んだことがありましたが、そのとき、リズムギターを担当する予定の人が持ってきたのが”モラレス”というモズライトタイプのギターでした。そして、ついに一度も練習に参加することなく、ギターだけ持ってきて、終いには取りに来なかったために、処分に困り、代表者だった私がもらい受けたものでした。このギターは大変重く、モズライトの2倍までは行かずとも1.5倍程度は重かったのではないでしょうか。ちなみに、このギターは当時ゼンオンというメーカーが、ベンチャーズ人気にあやかるために製造したもので、当時はエレキ・ギターの在庫が足りなくなり下駄屋がエレキ・ギターを作って売り出すほどのエレキ・ブームだったのです。当然、本来の楽器屋も、このようなモズライトまがいのギターを売り出しました。なにしろ、1ドルが360円という固定相場の時代、本場物は非常に高価だったのです。それで、このようなギターがいっぱいショーウインドウに並びました。モラレスとは違い、もう少し素性の良いギターもありました。モズレーに指導を受けた盛岡一夫氏が日本製のモズライトを作ったのです。今は幻のファーストマン社のAvenger Modelで、これは当時グヤトーンと並んでエレキを作っていたテスコの子会社でしたが、盛岡一夫が云うには、本場物と区別化するためにボディの形状が少し変えられており、いわゆるジャーマン・カーブが違います。 このギターはファーストマン社が倒産したために、お茶の水の楽器屋で非常に安くたたき売られたものを、私は所有していますが、結構本物のモズライトの音が出ました。セミー・モズレーによれば、モズライトは4つの肝を守って作れば誰でも作れるのだそうですが、その肝心の4つの肝は”秘密”ですが、盛岡一夫のアップロードした記事の中に書いてあり、秘密の中の一つがネックの板取だったそうです。詳細は語られていませんが、たぶん木材の年輪が作り出す目の使い方のことだと思います。
 
 さて、そのモラレスですが、非常に重いことと、ネックが反っており弦高が非常に高くなっており、実用になりません。しばらく死蔵しておりましたが、ある時思い立って改造することにしました。ネックのそりを水で濡らして重りをぶら下げて放置し、そりを矯正し、ボディを裏から掘って、出来るだけ中空にして軽くしようとしました。裏がスケルトンのままでは弦を張ったときにボディの強度が足りなくなりますので、3mmの化粧ベニヤ板で裏ふたつくり、2駅混合の接着剤でふたをしました。なんちゃってセミ・アコです。これがまた予想を裏切り、偉くいい音で鳴ったものです。セミ・アコの特徴であるアタック音が強くてエッジの立った歯切れのいい音で、バンドの中でも音が埋もれることがなく存在感を際だたせます。今思うに、共鳴音がボディを経巡ることにより音のスペクトル(倍音成分の強度)が変わり、アタック音を際だたせたのです。いい加減に作ったボディの内部構造のせいで、うまい具合に音のスペクトルが変わったのです。ソリッド・ギターであるモズライトも、バスウッドというあまり高級ではない木材の特性で、共鳴音がアタック音を際だたせてるのではないかと愚考します。楽器用の響きの良い高級木材を使うと、この共鳴音が綺麗に鳴りすぎて大きいために、アタック音が埋没します。安定したピッチのサスティーンが長いのでジャズのような楽曲には向いていますが、インパクトや味とコクがなくなります。

 その経験があって、もう少しましなギターで実験したくなりました。せっかくボディを交換するのですから、今まで活躍してくれた古いボディーを削って生まれ変わらせてやろうと思いました。いい音で鳴ればそのままにして、新しく作ったボディはもう一つ持っているジャパンのモズライトのボディと換装します。盛岡一夫のファーストマンが倒産したときに職人たちが独立して作ったというモズライト・ジャパン黒雲製で、これは日本の物作りの良さを感じさせる非常に精巧な出来映えのモズライトですが、肝心の音がいまいちです。音が綺麗に響きすぎます。日本人の耳に心地よい「ちんとんしゃん」という高音よりの音です。モズライトはもっと低い中音に偏ったバターくさい音でないといけません。この違いは、主にボディにあると思っているのです。マイクも違うでしょう。マイクも本物はあまりきらきらした高音は出ません。渋い感じで、つやっぽいけれど光っていないという感じ。でも、一般的な日本人の好みは高音よりのきらきらした音が好みのようで、アマチュアバンドのほとんどがこういう音を出しています。
 オーディオ・スピーカーの音作りにも同じことがいえて、日本製のスピーカーは多くがどんしゃりで、「ちんとんしゃん」です。YAMAHAのスピーカーやアンプのサウンド・ポリシーがこれです。YAMAHAとJBLの違いだと云っても、わかる人にはわかるはずです。この人種による耳の違いは、実はあらゆる点で共通する違いで、味覚についても似たような経験をしました。横浜のミッション・スクールの外人だらけのフェスティバルに紛れ込んだことがありますが、そこの模擬店で食べたハンバーグのなんとアメリカっぽかったことか。ほとんどソースの付いていない焦げ焦げの荒っぽいハンバーグでしたが、野性味があってとてもおいしかったことを覚えています。アメリカ製ってこれですよね。本筋をはずしていない、生命力のある製品です。日本製だと、まず照り焼きハンバーグに代表される凝りに凝った味付けで、おいしさをフィーチャーするのですが、ふと気がつくと別物になっている、といった次第。

 閑話休題、セミ・アコに戻します。
 バスウッドのボディを完全自作する前に、このセミ・アコでまずツールの使い勝手などの小手調べです。木工はさんざんやってきましたが、ほとんどが大きなもので、一番大きなDIYは中2階の下のガレージを自分の部屋に改造するというものでした。これはほとんど家を造ったようなもので、モルタル造りで外装はリシン掻き落としという本格的なものでした。アルミサッシも裏表2カ所に取り付け、壁は厚く防音仕様で、この中でファミリー・バンドファミチャーズが演奏したのです。住宅地の中ですので、地下室のような厚い壁を持った部屋が必要だったのです。ですから、逆に、この度のギターのような小物は、研究室で使うことを目的とした小型の本棚以外、初めての小型の細工物です。勝手が違うので準備運動が必要です。そして、精巧な模造品作りのスキルアップを兼ねています。ギターは、手作り感も価値がありますが、やはり、工業製品の完璧さも感じさせたいのです。…まあ、無理ですが。

 
サンバーストの63年モデルの写真によくある、ベストショット角度で撮った写真が次のものです。バインダーはベージュ色を選びました。純然たるホワイトもあったのですが、これも正解で、サンバーストを引き立てていて、なかなかグッドルッキングだと自画自賛。ただ、仕上げのクリアラッカーがちと失敗なのが玉に瑕というか大怪我でした。これは、下地の黒の塗装部分がラッカーを塗ると一緒に溶けてきて、しわしわに縮んだからです。水サンドペーパーでやるとこんどはブラックの防腐剤が剥げてきてしまい、塗り直しになりました。ふたたび、ラッカーを上塗りすると、またブラックが溶けルという繰り返し。恐らく、充分に乾燥しないとこうなるのでしょう。その充分という時間が読めません。早く音も聴きたかったので妥協しました。周辺がでこぼこの仕上がりとなりましたが、中心部は充分綺麗ですので、いったん塗装は終了、この写真のような仕上がりとなりました。
いったん取り外したネックを取り付け、さらにギターマイクやビブラミュート・アーム、ピックガードとボリュームなどを取り付けて、いよいよ音出しです。
 それにしても、63年モデルのこのボリュームの位置は魅力的ですね。取り付ける前に仮に部品を置いてみたとき、このコード・ジャックのない”顔”に、思わずぞくっとして、にんまり、嬉しくなりました。白いピックガードは3mmの塩ビを使い、新しく作ったものです。クリアラッカーで表面も艶っぽく化粧を施してあります。型どりは65年モデルですが、周囲を金属用の刃を付けたジグソーで切り出し、ヤスリで斜めに研磨して、これがなかなか良い感じ。市販のピックガードの中には、3ピースといって、白黒しろの3層になっているものがあるのですが、私は断然、この白のワンピースが好きなのです。元々のオリジナルがそうなっているからです。ボディの周囲を縁取るバインディングもワンピースがいい。
音出しはフェンダーの真空管アンプで行いました。
最初の印象が、なんか懐かしい音だなというもので、ソリッドギターにはない温かみのある音です。元のこのソリッドボディの時には冷たく堅かった印象で、いまいちだなと思っていましたが、これなら断然音楽的な音です。音の粒立ちがはっきりとし、エッジはくっきりとしていながら余韻が低音豊かに鳴り、音階がはっきりしています。これは演奏が楽しくなりそうです。
 セミ・アコといっても、ほんの少しの空洞化なので味付け程度だと思うのですが、それでも、大いに効果はありました。以前とは大違いの音です。やはり、ギターはボディの材質や構造で音が違うという確信を持ちました。

 このギターを用いて演奏したものを以下にご紹介します。最新録音です。今年(2016年)の12月10日ぐらいから録音しはじめました。比較的マイナーな、先に普通あまり演奏されない曲を選んで録音しました。そのうちにメジャーな曲もやりますが、私はマイナーな曲が好きなのです。

 …と、思って取り急ぎ70曲ばかり演奏してから再生してみたら、録音レベルがオーバーしていて音がひずんでいました。
以前、録音したときには感度の良いヘッドフォンで録音レベルも良かったのですが、どうもMDR−F1という昔のSONYのモニター・ヘッドフォンに換えたので、これはオープン。エアー方式で感度が低いので、演奏中の音圧レベルを上げて弾いてしまったようです。後で、波形をチェックしたらサチュレートしていました。ヘッドフォンを換えた理由はコードが長いので演奏しやすかったという、ただそれだけのことです。

 とりあえず、演奏はミス・トーン頻発ですがお許しいただくとして、許容範囲の曲15曲だけを、こんな具合というところでお聴かせします。あとで、すべて演奏し直します。結構、荒い演奏で、後で聴くとがっくりです。もう少し、丁寧に弾かないとダメですね。これらの録音はBOSSのJS−10という装置で、エフェクター内蔵のかなり優れものです。ご存じの方も多いと思いますので詳しくはRolandのHPをご覧になって下さい。その、エフェクターの60sFUZZでベンチャーズ・サウンドを作ると、かなり、そっくりな音が作れます。(65年ライブの「あの音」も)これらの音が下のサンプルで聴けると思いますが、とにかくデジタル録音はサチるとひどく歪むので、お聞き苦しい点があると思いますが、取り急ぎ、こんなところでご勘弁を。バックは本物のベンチャーズからいただきました。CDから読み込んでリードギターを極力キャンセルします。完全にはノーキーの音は消せません。カラオケ機能は完全でも、元の録音がいろいろ位相処理などを行っているためです。また、ピッチも微妙にずれていて、これらは基準音440Hzに極力そろえるのですが完璧にはいかないので、耳のいい人はチューニングが合っていないことを感じるかも知れません。すべて、私が悪いのです。お許し下さい。では、お耳汚しをしましょう。 

演奏曲目

1.Runaway   2.アイ・ライク・イット・ライク・ザット  3.グリーン・オニオン  4.ホット・ライン  5.ミスターモト
6.秘密諜報員  7.レッツ・ゴー    8.ユー・アー・マイ・サンシャイン  9.朝日の当たる家  10.ワイルド・ウッド・フラワーズ
11.フランキー・アンド・ジョニー12.センチメンタル・ギター13.夕日が沈む14.ナインス・ウェーヴ
15.テキーラ

ご参考のために録音した70曲の曲名だけ書いておきますね。

(このHPの全容量が10GBだったかな、全部アップロードできるか実は心配です。mp3一曲約3MBですので、このページだけだったら300曲はイケルでしょうが、他にも写真等のコンテンツがあるのです。)

0011-007、ビーチ・ファズ、バードロッカーズ、黒い瞳、ブラック・サンド・ビーチ、ブルーシャトー、カンディ・コンコクション
カウンターポイント、ダイアモンズ、夕日は沈む、ドライビング・ギター、エルグレコ、エスケープ、フィーヴァー、
フランキーアンドジョニー、フライト・オブ・ファンタジー、逃亡者、ギャンディーダンサー、ギンチー、ゴーゴー・スロー、ゴーン・ゴーン・ゴーン、
グリーングラス、グリーンオニオン、ハワイ・ファイヴ・オー、ヒィーヴィー、ホットライン、アイ・ライク・イット・ライク・ザット、インスタント・ギター、
若さでジャンプ、レッツゴー、ライズ、リトル・ビット・ミー・リトル・ビット・ユー、ロンリー・ガール、ラヴポーションNo9、ミスター・モト(ヤクルト・ホール版)、
マイ・ボニー・ライズ、ナインス・ウェーブ、アウトオブリミッツ、パーティ・イン・ラグナ、ピンク・パンサー、プリティ・ウーマン、サン・アントニオ・ローズ、
ランナウェイ、ランニン’ワイルド、さすらいのギター、スクラッチン、秘密諜報員、センチメンタルギター、シャ・ラ・ラ、
シーズノットゼア、ソーラー・レース、スチールギター・ラグ、ストップ・ジ・アクション、スワニー・リヴァー、テキーラ、朝日の当たる家、
帰ってこなかった男、トゥモロウズ・ラブ、若さでゴーゴー、ジョーカーズ・ワイルド、ワイルド・ウッド・フラワーズ、ウーリー・ブーリー、南風、
ユー・アー・マイ・サンシャイン、夜空の星、ラヴ・シック・ブルース、ミスターモトver2、エル・グレコver2、ピンと針、ギター・ブギ・シャッフル


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セミアコとして復活の使い古したギターの物語
このように響きを考慮して彫りました…この作業で一番活躍したのは丸鑿でした。丸鑿は凹凸の両面に対応して2種類あります。内側を丸く彫る鑿が主役でした。ギターの外形、すなわちジャーマン・カーブを彫るときなどは外側の丸鑿です。
 
 ボディの中心を通る背骨は強度を必要とするので残してありますが、その中心も、骨のようにちょっと空洞を作りました。これも、響きを期待します。

 この後の作業は残念ながら写真に撮ってありませんので、突然、完成した姿を次にご紹介します。

 このように、サンバースト塗装を施してあります。サンバーストは、試しに挑戦したのですが、意外と初めての割にはうまく行きました。楽器の色については、クラシック楽器のバイオリンやチェロなどのように茶褐色がしっくりしますね。いかにも、潤いのある響きが聴こえてくるような気がするからです。

 これからのギター塗装はサンバーストに決まりだな。最初はインクブルーにしようかなと思ったのですが、この板目が見えるラッカー・ニス塗装はなかなか貫禄があります。
 苦労しましたが、意外と結果はうまく行き、ご覧の通りの仕上がりとなりました。本物に比べて、木目も見えて野性的なサンバーストです。この方が私の好みに合いましたね。当初は売っているサンバーストをめざしたのですが、結果オーライでした。これからは、この方式でサンバーストは行こうと思いました。クラシック楽器のニス塗りの雰囲気もあるではないですか!
サンバースト塗装が終了し、乾燥中の様子です。

 ところで、この塗装には実はちょっと苦労しました。最初、はサンバースト塗装は、中心部をライトオークのステインを塗り、次第に赤っぽいステインのマホガニーを塗っていき、一番外側を黒っぽいステインを塗ればできあがりかと思いきや、そうは簡単に問屋が卸しませんでした。
 まず、当初の方針で塗装すると中心部のライト・オークが黄色みが足りず、全く地味で寂し〜い感じです。そして、赤を期待して塗ったマホガニーが、ふつうに塗ると赤紫ですが、ライトオークと重ねると、ぜんぜん赤っぽくないのです。さらに、外側の黒っぽい色は、こんな色のステインは実は売っていなかったので、木材の防腐剤の“ブラック”というのをコンプレッサーで噴霧塗装しましたが、防腐剤なので相当厚く塗らないと黒くなりません。そして、このステインは油性なのか、水性なのかいまいちはっきりしない代物で、充分に乾かないと、仕上げのクリア・ラッカーが綺麗に載ってくれません。ただ、本当の黒のラッカーだと、中間色が出ませんので、結果的には、この防腐剤が良い感じの仕上がりをもたらしました。なかなか渋い色合いなのです。いかにも日焼け、といった風情で、火であぶったみたいになります。キャンプ用のバーナーで本当に火であぶると、恐らく焦げ目がまだらになり、グラデーションのコントロールがうまく行かないかも知れませんが…。
 さて、黄色みと赤みが足りないのではギターのサンバースト塗装としては戴けませんので、なんとかしたいと思い、反射的にあまり深く考えずホームセンターにステインを探しに行きました。
 ステインもペイント仕様とラッカー仕様があるんですね。クリア・ラッカーで仕上げるんだったら、ラッカー・ステインでないといけないのですが、すでに、ペイント仕様で縫ってしまいましたから、「後の祭り」というか「けんかの後の棒ちぎり」です。それに、純然たる黄色とか赤のステインなど無いのです。そこで、思案しました。昔の万年筆用のインクはどうだ。ところが、今時のホームセンターなどに消耗品としての瓶に入ったインクなど全くないのです!そりゃあそうでしょう、あったとしても今時の万年筆、スペアカートリッジだし、それさえ、文房具専門店に行かないとあるわけ無かったのです。衝動的にホームセンターに来たのが間違いでした。ホームセンターには、生活必需品しか無いのですものね。そこで、再び思案しました。そうだ、プリンターのインクがいくらでもあるではないか!私はプリンターの詰め替えインクは捨てるほど持っています。なにしろ、昔、インクの連続供給の装置を考案してHPを作ったくらいですから。その当時、石神井にお住まいの詰め替えインクを製造している有名人”インクじいさん”が、私のHPに感激していっぱい送っていただいたものがまだ使われずに死蔵されています。実際に使ったのは市販品のインクでしたが、これらは、純然たるRGBおよび黄色と黒です。水性ですが、乾けば問題なくラッカー塗装が出来ます。これに決定!家に帰り、実行してみると、大変グッド!ティッシュに少しだけ沁ませて、ぼかし塗装も出来ます。これで、うまいこと写真のような仕上がりまで持って行くことが出来ました。
上の写真が、ちょっと高級な4mmのシナ合板で裏蓋を作り、それを木工ボンドで貼り、乾燥させている様子です。以前はラワン製3mmのベニア化粧板で叩くとぼんぼんと安っぽい音がしたので、今回は響きも考慮してすこし奢ったのです。ただ、叩くと安っぽいのですが、総合的にギターとして鳴らすと結構いい音なのが不思議でしたが。シナ合板は1mm厚いだけですがかなり堅くて丈夫です。さらにいい音が出るかなと期待しました。
 クランプで止めているのは、ギターの裏も若干曲面となっており、押さえつけないとぴったり貼れないからなのです。5mmほど高さの相対値があります。熱で曲げれば良いのでしょうが、それほどの曲面では無いので、木工ボンドが乾けば大丈夫でしょう。時間がたてば、合板もなじんできて剥がれることも無いはずです。