リチュウム・イオン電源
ご家庭でご不要になったビデオカメラ用のリチュウム・イオン電池を流用します。
公称7.4Vで2700mAですから、500万画素でもいやと云うほど撮れます。
【自作定電流回路による充電器と、その動作状態】
左上の4本束になっているものがビデオカメラ用のリチュウム・イオン電池。
黄色く見えている部分が内蔵されている異常動作を補償するIC基盤で
とりあえず充電の電流制御をしてくれます。
ーΔV検出回路かなと思いましたが違うみたいです。
この電池は逆接でヒューズが飛んだものを導線でショートして復活。
電圧は定電流回路のパワートランジスタのエミッタ抵抗2.2Ωの両端電圧をモニターしている。
したがって、455mAの電流で中速充電中。もう少し、電流値を増やした方が良いのでしょうが、
様子見です。そのうち、急速充電器にしましょう。これだと、電池の熱はあまり出ませんですね。
冷たいままです。でも、パワートランジスタの方は温かくなります。
☆
この電源本体は、安いカーバッテリーの充電器を流用しております。
したがって、12V充電器ですが、14.7Vぐらいの出力です。
左下の水色の電解コンデンサーの上に赤く光っているのが、
定電流回路を駆動しているバイアス用のフォト・ダイオードで、
これで充電状態がモニターできます。
定電流回路は、大概の回路集に載っているので、そちらを参考にしてください。
部品は、適当な大きさのシリコン・パワートランジスタ1個と、
バイアス用の560Ω、フォトダイオード、エミッタ抵抗の2.2Ω、
平滑用電解コンデンサー1個という具合に
きわめて簡単です。基盤など使わずに空中配線で組み上げました。
それから、小さな放熱器がケースの外に2つ付いておりますが、
1個が整流用のパワーダイオード用(上)、もう一つがパワートランジスタ用(下)です。
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なお、リチュウム・イオン電池をむき出しにする作業は、注意深くカッターなどで切り込みを入れてから
マイナスドライバの細いやつで、こじ開けます。
プラスチックケースは非常に薄いですから、中のリチュウム電池本体を切らないように注意してください。
割と簡単にケースは開けられますよ。
充電完了して、DiMAGE7に付け、起動した様子。
ご覧の通り、プラグ電源コードの根本で測って6.4Vを示しておりますから、
実際にカメラに入った電圧は6.0Vぴったし。
電源コードの長さは60cmぐらいで、ポケットにでも入れて、軽快に撮影できます。
ダイオードは電源整流用の許容電流値4AぐらいでOKです。
対称的に正負の電極に直付けしております。
これをクリップ方式にして使うにしても、ダイオードは半田付けをして固定した方が良いでしょう。
シリコンダイオードは安いですから、電池と込みにして置いた方が機械的に安定します。
実際の使用では、電池の丈夫に組み付けてあるIC基盤の保護のために、
外したプラスチックケースにもどして、テープなどで固定して使いましょう。
もちろん、自作電源の強みでこの辺の形状は任意です。とりあえず、完成。
ただ、カメラは1A要求しますから、ダイオードが少し温かくなります。
気になるほどではありません。
試用レポートは、後日発表します。
1月18日未明
使用レポート
1月19日に、東京湾13号地通称「お台場」のパレット・タウンにいき、
充電したリチュウム・イオン電池を試しました。
500万画素エコノミーという私の常用モードでバリバリ撮り
切れたときにPLAYモードにしてチェック。312枚!
まずまずかあ?
ちょっと少ないかなあ。
もしかすると、ダイオードで電圧を落としすぎたのかもしれません。
もう少し閾電圧の小さいショットキー・バリアを半分使うかな。
★
リチュウム・イオン2次電池は、
正極にリチュウム酸コバルト、負極にカーボン・グラファイトを用い、
Ni−MH電池の場合の水素の変わりにLiを使っている電池です。
だから、水素吸蔵金属ではなくリチュウム吸蔵カーボンというわけです。
【充電過程】
水素ほどではないにしてもLiイオンは小さいのです。
これがカーボン結晶の間に入ってきて負極から電子をもらうと
還元されてリチュウム金属原子となります。
金属原子となったリチュウムはイオンだったときの
1S軌道からなる閉殻の大きさから、2S軌道の大きさまでふくれあがります。
したがって、カーボン間隙に充満していく過程は、
余裕がある内はリチュウム原子が整列して入っていきます。
このとき、正極ではリチュウム酸コバルトとして詰まっていたリチュウムが
整然と表の方からイオン化され出ていきます。
【放電過程】
2次元で結合したグラファイト結晶の隙間に詰まっていたLi金属原子が
電子を陰極に放出し、イオンとなって電解液の中に飛び出してくる様は、
ニッケル水素の吸蔵金属から水素が飛び出してくる様とイメージが重なります。
Liイオンはセパレータの隙間を通って陽極で回路を回ってきた電子と結合し、
酸化コバルトと一緒になってリチュウム酸コバルトになるというわけです。
年々、性能はアップしているらしく、おもにカーボン結晶の改良で、
より多くのLi原子を吸蔵できるように結晶の間隔をぎりぎりの大きさに改良されているようですが、
2次元蜂の巣状結晶の間隔を詰めすぎたので、
最後の2割は結晶構造をゆがめながら入っていくそうです。
というわけで、過充電の時にLi原子が詰まりすぎて結晶構造を壊すことが劣化の原因です。
この最後の2割が、どうして結晶構造をゆがめながら入ることができるか
という秘密が、先ほどのイオンと金属のサイズの問題です。
イオンは最外殻電子の殻を脱いだものですから
貝殻を捨てたヤドカリ以上に小さいのです。
だから、電界をかけ続けている負極の隙間をめがけて
リチュウムイオンは突進し、中に入ってから還元されてサイズ・アップします。
この、中に入ってからのサイズ・アップほど迷惑なものはありません。
満員電車であとから入ってきた人が中に入ってから大きくなったようなものです。
さて、結晶構造をゆがめて詰まったリチュウムを放っておくとどうなるか。
これですね?気になるのは。
結晶格子の原子は統計的にある確率を持って大きな振動から小さな振動を受けております。
したがって、たまたま大きな振動を受けたときに結合が外れて、炭素原子の結晶の一部が破損します。
すると、そこのひずみは解消しますが近接したひずみが次に破損します。
このようにして、負極は過充電のたびに表面の炭素の結晶板は破砕し、負極はやせ細っていきます。
これが、劣化のプロセスです。
カーボン・グラファイトは共有結合ですから
一度切れた結合はつながりません。
また、破断したカーボン電極の電気抵抗値は大きくなります。
文字通り、これは電池の内部抵抗の増加となります。
よって、リチュウム電池に10Ω程度の外部抵抗をつないで、
電流値と電池端子の電圧を測定し、無負荷の時の電圧と比較して
内部抵抗が測れますから、元気な電池と比較して
内部抵抗がどれほどかを測定することにより
リチュウム・イオン電池の「年齢」がわかるでしょう。
これに反して、ニッケル水素の電池では、負極がカーボンではなく金属です。
金属の焼結体ですから完全な金属結合ではないにしても、隣接する間は金属結合です。
金属結合は方向性がないので、近づけばくっつきます。溶接や圧着ができるのも
その結合の性質があるからです。
それで、多少の水素のぎゅうぎゅう詰めが起こっても
負極の破壊は起こりません。何百回と同じところを繰り返し屈折伸張を繰り返せば
破断するでしょう。しかし、一発で破断するカーボンとは大いに異なります。
このことが、ニッケル水素電池の長寿命の原因となります。
ちなみに、私のところではサンヨーの1600mAhが2年以上全く問題なく活躍しておりますが、
キャノンのリチュウム・イオン電池は1年半でご隠居となりました。およそ、20回の充放電の果てにです。
たぶん、私のこまめな過充電のせいでしょう。
でも、長時間かかる3つの電池の充電を
使用直前にしろというのは無理なご命令で、
充電器の方で制御してもらいたかったですね。
ソニーのビデオのリチュウム・イオン電池も同じく加齢現象を呈しております。
それと、後にわかったことですが
リチュウム・イオン電池本体の上に付いている基盤は、
リチュウム・イオン電池の異常動作を制御するためのものだそうです。
これが、機種の異なるものの間で動作が異なるため、
リチュウム・イオン電池は純正を使うように指示されているらしい。
そりゃそうだ。違うメーカーの電池は取り付け形状が異なり、そもそも挿入できません。
プラグを着けてしまえばクリアです。
☆
過放電でもリチュウム電池は正極が劣化するそうで、
だから、長持ちさせるには、過充電をさけ、50%使っては軽く追い充電をするのが良いと、
物の本に書いてあります。まあ、50パーセントは慎重がすぎるというもので、
80%ぐらい行ってもかまわないと思いますが。
保存は20〜30パーセントの充電量で冷所保管だそうです。
てことは、使った後は少し充電して保管ですか。
有効電流量が少なすぎではありませんか?
負極のカーボンが壊れやすいのでシリコンや錫を考えているのだそうな。
また、正極もニッケルとかマンガンをコバルトの変わりに使うことが検討されているそうな。
これらが、これからのLiイオン電池の改良点だって!
なんだか、ニッケル水素電池の方がいい感じに思えてきた。